第11章 修復
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あれから何れくらいの時間が経ったのだろうか。
取って置きのワイン。
それ以外のワインボトルも既に数本、空になって並べられていた。
時刻も既に深夜を回っている。
「あ゙ー!思い出しただけでも腹が立つ!」
既に何杯目か判らぬグラスに入っていたワインを一気に飲み干して、中也は更に飲もうとボトルに手を伸ばした。
其れを紬がヒョイとボトルを取り上げて妨げる。
「おい!隠すな!」
「それくらいにしておき給えよ、全く。強くない癖にすぐ飲み過ぎるんだから」
「うるせえ!」
真っ赤な顔をした中也が紬からボトルを奪おうとズカズカと紬の側に寄って手を伸ばす。
が。
「うおッ!?」
既に完全に出来上がっている中也。
足が縺れてそのまま紬に向かって盛大に転けてしまった。
「ほら。云わんこっちゃ無い」
「……。」
やれやれ、と息を吐きながらぼやく紬は自身の胸の中に飛び込んできた中也の頭をポンポンと撫でる。
恥ずかしいのか、ただ単に思考が回ってないのか。
紬の言葉に返事すること無く中也は紬の隣に座った。
「紬の云う通りじゃ、中也。お主、明日は早朝から重要な任務があるだろう?今日はその辺にしておき」
紅葉も紬の肩を持って制止してきたため、中也は小声で返事して舌打ちする。
この様子に紅葉も呆れる。
「紬」
「はい?」
「中也を送ってくれんかのう?」
「いや、俺は独りで帰れますから!」
中也が抗議の声を上げるが、紅葉はシラッとした目を送って直ぐに紬に戻す。
「先刻も云ったんじゃが、中也は明日、早朝からどうしても外せぬ任務が入っておる。こんな様子じゃ。明日の出社の事を考えて此処から一番近くの家で善い。頼めぬか?」
「……仕方無いですねえ」
紬は立ち上がって、中也の襟首をガシッと掴んだ。
「オイ!俺は未だ手前ェと帰るなんて一言も云って無ェ!」
「何じゃ、中也。何なら私が送ろうか?」
「ぇ゙」
じたばたしていた中也がピタリと抵抗を止める。
大人しく自分と帰ることを選んだのだと理解した紬は挨拶を済ませて中也を引き摺ったまま部屋を後にしたのだった。