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【文スト】対黒・陰

第8章 因果


―――


「こんな僻地で再び君と見えるとは…………」

太宰治はとある駅にいた。

「余程 私と雌雄を決したいらしい」


格好よく、立ちはだかる相手に台詞を云う。


ハッハッ……ワンワン!!


「おっと!威勢がいいね。だが無駄だよ。こちらには切り札がある 見給え」


サッ!と懐から取り出したるはドッグフード。


「欲しいかい?欲しいよねぇ」




太宰の前で対峙していた『犬』相手に、手品を披露してからかうと勝ち誇ったように笑う。


「これに懲りたら街中で私に吠えるのは慎む事だ」


手にしているドッグフードを数個頬張り、スタスタと待ち合いのための椅子に座っている敦の元へと歩いていった。


「犬……苦手なんですか?」

「人間より余程難敵だよ」


そのやり取りを一部始終、呆れた様子で見ていた敦が太宰に話し掛けた。


「それで事務員さん達の避難は?」

「国木田さんからの連絡で予定通り次の列車だそうです」

「事務員が狙われるなんて……この三社戦争 探偵社は大丈夫でしょうか」


敦が心配そうに問う。


「そうだねぇ。私の見立てでは探偵社が最も劣勢。最優勢はマフィアかな」

「そんな……太宰さん何か逆転の計略は無いのですか?」

「あるよ これくらい」


太宰は指で3を表して、返事をする。

「三つも?」

「いや?三百だけど」

「三百!?」

さらりと桁違いの数字を述べて、敦を驚かせる。

「けどね 敦君。戦況は生き物だ。必勝の秘策が僅かな状況変化ひとつで愚策に豹変する。だから情報が大事なのだよ。特に今回は相手が相手だ」


太宰の言葉で敦の脳裏にポートマフィアの首領である森の姿が浮かぶ。


「森さんは合理性の権化でね。数式の如き冷徹さで戦況を支配する」

「……。」

敦は真剣に話す太宰の言葉を黙って聞いている。


「それに、こんな大規模な戦争だ。流石に『あの子』も動いてるだろうし」

「『あの子』?」

クシャッと手に持っていたドッグフードを握り潰す。


「芥川君の上司でね。立てる作戦が残忍残虐性に富んでいて、且つ合理的なものばかり。ポートマフィアの中でも中々右に出るものは居ないと云われているんだ」

「っ…そんな人が……」

「……。」


驚く敦。自分で云ったにも拘らず、眉間にシワを寄せている太宰。
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