第8章 因果
「つまりアンタらは事務員の居場所を探り出して組合に密告しさらにそれを探偵社に密告。自分達は汗ひとつかかずに二つの敵を穴に落としたって訳かい」
「穴だと判っていても探偵社は落ちずにはいられねえ 首領の言葉だ」
与謝野の言葉にニヤッと笑いながら中也は云った。
「ご苦労なこッた。態々、事務員の場所まで探るんだから」
「お宅等の社長が云ってた『敵に情報を与え操る高等戦術』を最も得意とする作戦参謀が、うちには居るんでねえ」
「随分な性格の持ち主だねェ、そりゃ。顔がみてみたいもンだ」
ハッと鼻で笑って嫌味を云い捨てる与謝野。
「見慣れてんだろ」
中也は少し間をあけて、小声で云った。
「はぁ?」
理解不能だと云う反応をする与謝野に対してフッと笑うと中也はその場を去るべく踵を返す。
「まあ、気の毒だとは思うぜ?如何せん、その作戦参謀のご機嫌が最悪じゃなけりゃあ少なくとも事務員は無事だったかも知れねぇからな」
「アンタらのご機嫌なんざうちには関係無い」
「あるんだよなァそれが」
「はあ!?一寸、待ちな!?」
与謝野が止めるも中也は歩みを止めない。
「後は太宰の野郎にでも聞けよ」
中也は手をヒラヒラさせながらその場を去っていった。