第8章 因果
中也は持っていた機械が反応を示す場所を訪れていた。
緊迫した状況下で、目前に迫っている敵兵を迎え撃つために探偵社が仕掛けていた自動迎撃銃が一斉に銃口を中也に向け、発砲を始める。
中也は銃口が己に向いたことに気付くも、全く動じずにニヤリと笑う。
その笑顔の通り、ポケットに手を突っ込んだままの姿勢で凡て破壊した。
「特使の接待役がこんな木偶とは。泣かせる人手不足じゃねえか、探偵社」
監視カメラに向かって話し掛ける。
「生きてる奴が出て来いよ」
挑発するだけ挑発して中也は更に奥へと歩みを進める。
暫くして。
鼻唄混じりに歩いていると漸く人の気配を感じ、歩みを止めた。
立っているのは女と少年の2人だ。
「たった二人か。見縊られた話だぜ」
ハァ、と息を吐きながら云い捨てる。
「探偵社は事前予約制でねェ。対応が不満なら余所を中りな」
「マフィアが敵拠点で暴れるのに予約が要ると思うか?」
「はい!要らないと思います!」
中也の問いに少年……宮沢賢治が笑顔で返事する。
その様子に女の方……与謝野晶子は頭をかきながら噺を続けた。
「賢治の云う通りだよ。暴れたいなら好きにしな。けどアンタは暴れに来たんじゃない だろ?」
「ほう 何故そう思う?」
「ウチは探偵だよ。訪客の目的位一目で見抜けなくてどうするンだい」
「お宅の社長は?」
与謝野の言葉に納得したのか。
反論することなく中也は会話を続けた。
「そこだよ」
クイッと指で示された監視カメラの前に移動する中也。
そして、ポケットから先刻の。
紬から渡された写真をピラッと見せながらニヤッと笑った。
「うちの首領からお宅等に贈品だ」
写っているのは『組合』の団員だ。
「奴等を『餌』で釣った。現れる場所と時間も此処に書いてある。煮るなり焼くなり御自由にどうぞ」
云った情報の正確性を証明するように、写真の後ろに記載された時間や場所のメモを見せながら話す。
「こんな好機、滅多に無えだろ?憎っくき組合に一泡吹かせてやれよ」
然し、中也はポートマフィアの人間だ。
裏がないわけが、無い。
そう疑うのは当然だ。
「成る程。唆られる案だね。けどもっと善い案があるよ」
ニッコリ笑いながら与謝野が反応した。