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【文スト】対黒・陰

第22章 想歌


そう時間が経たない内に、再び紬から寝息が聞こえ始める。

よっぽど寝不足なんだな、と。
部下達はそう思いながら仕事をしていた。


してはいたが、気になりはするーーー。


今まで全く知らなかったのだ。
否、この様に中也が紬を甘やかしてソファに寝せている事なんて頻繁にあったことなのに、これっぽっちも『男女の関係』だなんて思ったことがなかったのだ。


「あの……中也さん」

「ン?何だよ」

書類から目を離さずに部下に返事する中也。

「指輪………」

「指輪?ああ、コレか。」

手袋に隠れてしまった、其処に在る筈のものを掲げ見る。

「先刻、太宰さんが『二股』って………その………」

「……彼奴の指にあンのも視たのか」

「「済みません」」

何故か謝る部下に「謝る必要はねぇよ」と云って苦笑する。


「『双黒』って聞いたことあンだろ?」

「あ、はい。御二人の事ですよね?」

「まあ、半分正解だ」

「「え?」」

「正確に云えば『太宰兄妹の何方か』と『俺』のコンビが双黒だ」

「何方か……」

今や紬と中也のコンビ名として定着しているが
先日拝見した資料には確かにそう記されていた事を部下は思い出した。


「俺は……此奴等と肩を並べていたかった」

「「!」」


ポツリと呟かれた言葉。
しかし、その声は確りと部下達の耳に届いていた。

「太宰の糞野郎は離反しちまったが、彼奴と紬は絶対に切り離せねェ……この双子は互いが唯一で絶対だ。何方かに何かあれば、もう片方がそれを赦さないーーー『対黒』なんて恐れられてる由縁だな」

「「『対黒』……」」



『対黒』ーーーこの言葉も真っ黒な内容の資料に幾度となく記載されていた単語だった。



「彼奴の隣に紬が居て、紬の隣には彼奴がいる。その双子の、もう片方の隣を誰にも譲りたくなかったーーー相棒になったあの日からずっと……」

「中也さん……」


「コレはその意思の表れだ」

紬の頭を優しく撫で続けながら中也は話す。
その声は酷く穏やかなものだった。
しかし、


「けどな」


直ぐに何時もの中也に戻った。
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