第22章 想歌
「彼方の被害の確認を先にしろ」
「はっ!」
近くにいた男にそう指示をすると中也は煙草に火を付けて今回、最も激しい銃弾戦を行った区域に歩き出した。
部下その1が中也が1人歩いていくのに気付き、付いていく。
「あ?何だ。手前の持ち場は終わったのか?」
「はい。一番大変な所に行かれるのですよね?御供します」
そう云って目的の場所へと向かった。
本当に激しかったのだろう。
辺りには未だに硝煙の臭いが漂っていた。
地面には敵の死体ばかりが何体も転がったままだ。
そんな中、中也が急にキョロキョロし始めた。
何を探しているのだろうか?
部下が「何をお探しですか?」と声を掛けようとした時だった。
目的のものを見付けたのか。
歩く方向をかえて、そして立ち止まった。
「あっ…!」
部下の目に入ってきたのは、数ある死体の中で唯一の味方ーーー伝令の男だった。
「ぅ"………」
まだ息がある!
しかし、部下が動こうとしたよりも早く、中也が先に動いたため部下はピタリと動きを止めた。
何故ならーーー
「がっ……ぁ………!?」
「よォ。随分としぶといなァ?」
中也が伝令の男の頭を踏みつけたからだ。
「…な…原………ん部…………何、故……」
息も絶え絶えに、踏みつける男に質問を繰り出す伝令。
「ポートマフィアに入ったばっかりの手前は聴いたこと無いかも知れねえけどな。ポートマフィアには幾つもの云い習わしが存在する」
ぐっ、と脚に力を入れる。
「その中の大半があの双子に関することなんだが」
「………ぅ"あ!?………や"め"……!!」
中也を中心に地面に亀裂が入り始める。
「その内の1つにな、あンだよ」
ミシミシミシミシ………
本日3度目の人が潰れていく光景を部下は黙って観ている。
「『太宰紬を女として見た人間は必ず死ぬ』ってな」
薄れゆく意識の中で、
最期に聴こえたのはこの声と、自身の骨が碎け散る音だけだったーーー。
「任務中に死亡ーーー記録しておけ」
「はっ」
去っていく中也に一礼して、部下は「元」伝令を見た。
「だから………云っただろうが」
そっと呟いた部下は黙祷を捧げて、死体の片付けに入った。