第22章 想歌
「同じ期間我慢したってンのに彼奴だけ優遇されンのは納得いかねぇ」
「……はいはい判った。中也の我が儘も1つ訊く、これで良いんでしょ?」
「おう。忘れんなよ?その約束」
「判ったから。送信は止めて」
ニカッと笑うと大人しくメールを削除して懐に仕舞った。
「あ、そうだ。今日の殲滅案件だけどさ」
「それは俺が行く」
「え?」
紬を乗せたまま中也が上体を起こした。
よって紬は中也の膝の上に座る体勢になる。
「一寸、やらねぇといけねーことがあンだよ」
「ふーん…?じゃあ明日でいいか」
「?何がだよ」
「否、此方の話。だったら全部任せるよ?私は本当に全部片付いたか確認して報告書を纏めて3日後までに首領に最終報告したいから」
「おう」
「あ、3日後の夜は空けといて。片付いた記念に##プリンスホテルで食事するから」
「あ?何だよ。………ホントは試食に行きたかったのか?珍しいじゃねーの」
「うん。だって『蟹』尽くしだったでしょ?」
「あ。」
そう云えばコースは2種類あり、自分が食べた方は肉がメインの料理だったが、あの女が食ってたのは蟹が惜しみ無く使われていた料理だった気がする、と。
昨日の事を思い出す。
「この日のためにね特別なワインと珍しい地酒も入手させたのだよ」
ニコニコと笑いながら云う紬に苦笑するしか無かった。
オーナーが云っていた『中也が飲みたがっていたワイン』は紬が中也の為に用意させたも同然だったからだ。
「気に入った和酒もスパークリングだったから和酒にも洋酒にも合うような料理にするようにシェフに云ったんだ。シャンパングラスでのむ日本酒もお洒落だろう?そしたら中也も治も楽しめるだろうし……わっ!」
愉しそうに話す紬を抱き寄せて中也は右の首筋に唇を寄せた。
「っ……んっ…!」
ちろちろと舌を這わせて襟を開いて強く吸う。
紬は抵抗せずにその行為を受け入れている。
「太宰にも連絡してやれよ」
「んっ」
最後に軽く口付けを交わすと中也は紬を降ろして自室へと戻っていった。