第22章 想歌
首領への報告を済ませて紬は自分の執務室へと戻ってきた。
「あと1人は夜にでも……」
そう云いながら扉を開ける。
「……何で此処にいるの」
「あん?手前が押し付けた書類を返しに来たんだよ」
「勿論、終わってるんでしょ?」
「当たり前だ!期限が今日の午前中までのばっかじゃねぇか!」
ソファに座って珈琲を飲んでいた中也はカップをおいて紬に云い放った。
「ンでもう1つ」
「ん?」
隣に座った紬に端末を見せる。
「げ!一寸、本気で治に連絡する心算なの!?止めてって云ったのに!!」
「此を期に少し反省しろや」
「反省ならすらからホントにやめて!この間も中也が煽ったりするから!」
「ほォ?未だ反省してないな」
「~~~っ!」
端末に向かって手を伸ばすもヒョイと遠ざけられた為、中也の上にのし掛かった状態になる。
そして
「んっ!?」
端末を持っていない方の手でガッチリとあたまを抑えると紬の唇に噛み付いた。
クチュ…と粘着性のある水音が響く。
くたりと紬の身体から力が抜けたところで中也は漸く紬を解放した。
「……いきなり何…」
「溜まってンだよ。判ンだろ?」
「昨日シたんでしょ?」
「莫ァ迦。あんな女で満足できるか。アレなら自慰ヤってる方が抜けたっつーの」
「………そう」
中也の胸の中に顔を埋めて云う。
珍しく照れている様子の紬に中也の気分を良くしたのかクックッと喉をならしながら笑った。
「ただですら治の機嫌が悪いんだからソレは止めて」
「良いぜ?止めてやっても」
「………何。条件でもあるの?」
顔だけ動かして中也を見上げる。
「手前、太宰の云うことを何でも1つきいてやるって約束したらしいなァ?」
「うげ。何で知ってんの!?」
「この間、飲んでたときに自慢気に話されたンだよ」
この間……。
紬の脳裏に、
病み上がりというのに紬が帰宅した時点で完璧に出来上がっていた中也の姿が過った。
あの時、自分の兄も相当酔っていた事も思い出す。
「そんな話をしてたのか」
はあ、と呆れた声で呟いた紬の頭を中也は優しく撫でている。