第21章 終焉
「その入院時に××君が異能者であることも、自分の腹違いの弟であることも知った彼は勿論、自分の計画に本格的に加担させたいと思った。しかし、彼はそういう荒事を嫌っていた。父親とは全く会ったこと無かったが碌な人間ではないと親戚から教え込まれていたからだ。却説、如何したものか。そう考えていたところに舞い降りた情報ーーー△△と××は交際している、と」
「「!?」」
山吹と××が○○の方を見た。
「此れを利用しようと企てた○○は先ず彼女に近づいた。元より自由奔放で金遣いの荒い彼女は○○の誘いに乗った。そして、××君の利用価値を彼女に伝え、××君も仲間に引き入れたのだよ」
「何だ、最初から棄て駒じゃねえか」
「だからそう云ってたでしょ」
「まあ、手前はな」
「「違う!!」」
山吹と○○は大声で否定した。
しかし、その声は既に届かない。
その瞳には光が灯っていなかった。
「此奴等の人間性は判った。で?『黄泉』っつーのが此奴等が取引をしようとしていたあの気体か?」
「そ。液体を気化させてたのが私が見たモノだろうね」
「解毒剤まであるなら意味ねぇな」
「毒を造るならその過程で生まれるものだよ。それは仕方ないさ。まあ、サンプルと資料はウチに持って帰ってきた分を除けば凡て処分した。もう出回ることも無いさ」
そう云った瞬間に、○○は笑い始めた。
「ふ…ふはは!資料なんて要らない!凡ては私の頭の中にあるからね!そんなもの幾ら処分しようと……あ?」
そう叫んだ○○の前に中也がスッと立った。
「つくづくお目出てぇ頭してンな?」
「え?」
中也が頭に手を置いた。
瞬間、
メキメキと何かが壊れていく音が響いた。
「ヒッ!?」
「ぐがっ……ギ…………ぁ"……!!」
「ぁあ………!!」
「何で生きて此処を出れると思ってンだよ」
そう云い放った言葉は○○には届かなかった。
只の肉の塊と化したモノを詰まらなそうにみて、紬は山吹に視線を移した。
「君も「ああ」は成りたくないよね?」
「っ…!」
「ほら、本当のことを君の口でお喋りしてあげなよ」
ニコッと。
心の底から笑っている笑顔を初めて向けられた山吹はカタカタ震えながら凡てを語り始めた。
当然、凡て紬の云った通りだった。