第21章 終焉
「山吹蓮、本名△△蓮。この辺を牛耳っている△△組組長の孫娘なんだよ、彼女」
「!?」
「へぇー」
何故、それをと云わんばかりの目で紬を見ている。
「ふふっ。この世の事なんて調べれば大抵判るよ」
「ッ!」
心を読まれた事も相まって、山吹……△△は口を閉ざした。
「んで、その大学講師の祖父、父親は二代に渡って△△組に入団しているってわけ。そのせいで生活が苦しかったその男は頭脳を駆使して復讐……とまではいかないが打撃を与えることを思い付いた。それが『楽園』にとって代わる『理想郷』の出生だ」
「この間壊した工場と関係があるのか?」
「勿論。あの工場の本当の持ち主は、その男の祖父の兄で製薬会社を設立して成功を納めた人間だ。代替わりの際に、絶縁の手切れ金としてその工場を譲り渡した。けど、録な人生を歩まなかった彼の父親は棲み家として使うだけにとどまった。故に、彼は自由に研究が出来ていたのだよ」
誰も否定しないのをみて中也は先を促した。
「程なくして思い描いた薬は出来た。が、非合法組織になんて回したら足が着くと考えた彼は『若い者の間で快楽を高める薬』として流行らせることにした。それから実験と称して、大学でも精製を始めたのだよ。化学式しかみなければそれが違法薬物等と気付かないだろうし、抑も『楽園』なんて表に出回る薬ではないからね。そうして隠れ蓑や精製方法を確立していっていた時に彼女と知り合う」
「!」
中也が小さく反応したが紬は構わず続けた。
「勿論、彼は優秀な頭脳を持っていた。故に、仲間にしている学生の事を調べあげ、仲間にするか否かをきちんと選別していた。彼女についても同様だ。深く調べて△△の孫娘だと云うことを知ったんだ。そんな△△の事をどうしようかと考えていたところに、彼の生徒が実験に失敗してしまった。大事には至らなかったが、一時は意識不明の重体まで陥ってしまっているーーーそれが『黄泉』を造ろうとしたこの始まり、そして、もう1人との出会いだ」
何だ、この女性は。
何で知らない筈のことを知っているんだ。
恰かも「ずっと見ていた」と云わんばかりにーー………
「実験の失敗をした生徒こそ××君、君だね?」
急に話題を振られて驚く××だったが直ぐに首を縦に振った。