第21章 終焉
んぅ……と呻き声をあげて山吹は目を覚ました。
「!?」
ジャラ…と手足を拘束されている状況に本格的に覚醒する。
「やぁ。気分は如何だい?」
「!」
目の前に居るのは真っ黒の。
悪魔とさえ呼ばれている女性ーーー太宰紬だ。
「これは……何の冗談でしょうか……」
震える声で取り繕う山吹を嘲笑うように見て、紬はクルリと後ろを振り返った。
「だってよ中也」
「はっ。本当に忘れちまってンのか。お目出度い奴だな」
帽子を正しながら紬の隣……を通り越して山吹の胸ぐらを掴んだ。
「俺と過ごした甘い夜も、手前がベラベラ喋った内容も全部か?」
「!?私は昨日の夜、貴方となんて……!」
そう勢い良く云った瞬間だった。
山吹の頭に、今の今まで無かった、しかし確かに自分が経験した記憶が大量に流れ込んできた。
「……ぁ………あ……!!」
何時の間にか紬の隣に立っていた男が「何か」をしたようだった。
「思い出したかい?最後の楽しい思い出を」
ニッコリ笑って云った紬を見て、直ぐに目の前の男に視線を移す。
「…そんなっ……、中也さん!私はっ……」
「気安く呼ぶんじゃねえよ阿婆擦れが」
「っ!違うんです!私、本当に脅されてっ……!!」
ジャラジャラと。
もがきながら必死に弁解する山吹を無視して紬の隣に戻る。
「ねえ山吹君」
「っ!」
何時もより声のトーンが低い紬にビクッとする。
「君さ、中也の車に盗聴器仕掛けてたでしょ」
「!?……何の事……」
「『作戦暗号ーーー『カンテラの灯と酒宴』」
「!?」
大きく反応した山吹に、紬はニコッと笑い掛けた。
「『カンテラの灯と酒宴』はね、あの時の任務の作戦暗号じゃない」
「………え」
「近くにいる異性を暴けーーー時が来たから、本格的に君から凡ての情報を聞き出せという暗号だったのだよ」
「なっ!?」
山吹は慌てて中也の方を見た。