第21章 終焉
そうだ。
こんな裏切り者の阿婆擦れ女よりも自分の事を欲してくれる人が俺にはーーー。
「おい、山吹」
「あ、はい!?」
「なんだァ?その顔」
「へ?あ、いや、貴方は何故此処に?」
「紬から手前の部下の仕事振りは手前の目で確認して来いって云われてよ。ンで様子見に来てみりゃ、話し声が聴こえた気がしたからな」
「紬って…太宰幹部ですか?名前で呼ぶなんて……」
「はァ?俺は彼奴の相棒だ。名前で呼んで何が悪い?」
「……え?」
「山吹、お前何か可笑しいぞ?俺は紬の相棒で部下じゃねェ。そんな事、俺の秘書なんだから知らねぇ訳ねーだろ?」
「………え……?」
山吹は混乱している。
話が噛み合っていないのだ。
何故そんなことがーーー。
そう思った瞬間に、××が視界に入った。
真逆………そんな………
「あの」
「あ?何だよ」
××が中也に話し掛けた。
その顔を彩っているのは黒い陰ーーー
その表情に中也はほくそ笑んだ。
「『この女』は俺の仲間ーーー貴方達の裏切り者です」
「へェ……」
「なっ…!?」
グルリと首を動かして獰猛な笑みを浮かべながら山吹を見る中也。
「そいつは聞き捨てならねぇな」
「そんな…!捕虜の云う妄言を真に受けるんですか!?」
「さァな?それを管轄するのは俺じゃねえ。紬だ」
「っ!?」
紬の名前が出てきた瞬間に山吹の顔が青褪めた。
そして、トスッと素早く手刀を繰り出すと山吹はその場に崩れ落ちた。
「ったく…俺達ポートマフィアの内部に紛れるなんてな」
そう云うと中也は男に手を差し出した。
「え?」
その意味を理解できずにいると中也はニヤリと笑って見せた。
「今から此奴を拷問に掛ける。既に捕らえてある男と共にな」
「!」
「見たくねぇか?知りたくはねぇか?凡ての真実を」
悪魔の囁きだ。
良く見れば、自分に「好きにしていい」と云った女性と同じくらい顔立ちの整っている男。
正に、妖艶という言葉が似合うーーー。
男は差し出された手を取った。