第21章 終焉
山吹は指定された観察室の前まで来ていた。
懐に仕舞ってある銃の存在を確かめてから扉の鍵を開けた。
動揺や緊張など相手に悟られてはなめられてしまう。
キッとした顔付きで入室したーーが。
「………は?」
中に居た男の顔を見て、思わず間抜けな声をあげてしまった。
「………悪い……捕まった」
「何故っ……!」
訊きたいことが合ったのだろうが山吹はその前に部屋をグルリと確認した。
カメラなどの映像の類いは、無い。
それを確認し終わると、潜めた声で男に話し掛けた。
「何故?貴方と○○の接点は社会では切り離されていて無かった筈……見付かるわけがないのに」
「指令通りに『太宰治』とかいう男の大切な記憶を奪いに行った。相手は『異能無効化』の持ち主ってことで困っていたら『助言と協力』をしてくれた人がいて。なんとか命懸けで成功した……けど……」
「………まぁ良いわ。太宰幹部は兄を狙われたことに対して想像以上に激昂していた。犯人を是が非でも捕らえたいと思うのも無理はなかったのかも」
「本当にゴメン」
項垂れる男に山吹は呆れた眼を送った。
「此処から逃げることは骨が折れるわ。未だに○○も逃がせないの」
「義兄さんは無事か?」
「ええ、生きてるわ」
「そっか。この作戦が無事に成功したら義兄さんに俺達の関係を話して盛大に結婚式を挙げる予定だもんな」
「え、え。そうね」
山吹の声が僅かにみだれる。
××は気付かなかったようだが。
「幸せの為にも逃げなきゃ。あ、そうだ。蓮、今なら俺を逃がせるんじゃないか?」
「へ?いや、無理よ!今××が逃げたら○○が…!」
「……。」
山吹は目の前の男よりも牢屋にいる男の命が危険に晒される可能性を口にした。
いや、してしまったのだ。
慌てて口を閉ざしたが2人の間に気まずい空気が流れる。
そんな時に、この部屋に新たな入室者が現れた。
「よォ、山吹。ちゃんと仕事してるか?」
「「!?」」
入ってきたのは中也だ。
山吹から視線を外して××に話し掛ける。
「脚は痛むか?」
「え?いや……」
「紬か。捕虜だってのに随分気に入られてンな」
「!」
この一言で、××の中に何かが思い出された。