第21章 終焉
××はモニターを見ながら興奮していた。
なにも成人男性が性欲を発散するために見るような映像を観ていた訳ではない。
写っているのは中也の執務室ーーー
そう。
今しがた紬と男2名で行われたやり取りの一部始終に、画面越しで参加していたのだ。
予め、紬が立てたという計画を聞いていた。
その計画が一切の乱れなく正確に成し遂げられたというーーー云うなればドラマでも観ていたかのような気分になっていたのだ。
男達を殺すためのシナリオだ。
演技や事前の口裏合わせなど、しているわけがない。
紬が大きく写し出された途端に真っ黒になってしまった画面を未だに見続ける程に、××は興奮してしまっている。
カチャリ。
「!」
扉の開く音で××はハッとした。
ついさっきまで画面の向こう側にいた女性が入室してきたからだ。
「やぁ。如何だったかな?」
「凄いです…!凄すぎる……!何もかもが貴女の云う通りだ!!」
「うふふ。そんなに誉めてもらえるなんて照れるね」
ニッコリ笑って云う紬に顔を赤らめる。
仲間を殺されたというのに、最早××の眼には紬しか映っていなかったのかもしれない。
「却説、××君。今見てもらった通り、君も訓練すれば君の描くシナリオ通りに物事を運ぶことが出来る可能性がある。私の部下になればそれ相応の待遇は出来るしね。是非、前向きに検討してくれ給え」
「!」
××の首が僅かに下がって、止まった。
本当はその場で決めてしまいたかったのだが、気掛かりが1つ残っている。
「ふふっ。『彼女』の事を考えているね?」
「!」
××はハッとした顔をした。
ーーー図星だ。
「もう間もなく彼女は出勤してくる。私が『捕虜の監視』という任務と称して此処に寄越そう。いいかい?君はポートマフィアに捕らえられてしまった捕虜を演じるんだ」
「……判りました。他に気を付けることは…」
「昨日も云ったけど後は好きにしていいよ?」
「え。」
相変わらず破天荒なことを云う。
何も考えてないのかと、先刻のやり取りを見てなかったら思うところだが。