第21章 終焉
翌朝ーーー
未だ日が昇ってばかりの午前6時頃
誰も居ない中也の執務室。
その部屋に迷いなく黒尽く目の男が2人入室し。
「間違いないんだろうな?」
「ああ。昨晩、『例の薬について纏めた書類を何時ものところに置いておく』ってあの女が云ってたからな」
「なら、早く探すぞ。中原の部下には彼奴が出勤する前に部屋の掃除をするのが日課の奴が居るらしいからな」
3人は中也の執務室に設置してある棚やら机やらを漁りはじめ
「ふぁ~」
「「!?」」
ようとした。
バッ!!
その動きを止めて、声がした方を一斉に向く。
「なっ!」
のそり、とソファから誰かの上半身が現れる。
どうやらそこで寝ていたようだ。
ジャキイィッ!
男達が一斉に銃を構えた。
「何だい?騒々しい。今眠ったばっかりだって云うのに」
「っ、何故、貴女が此処にっ!?」
銃口を向けたままソファに座っている人物に話し掛けた。
その人物はヒラリとソファを飛び越えて、その背もたれ部分に腰掛けた。
「私よりも君達の方が理由が付かないだろう?たかだか入団して半年も経たない下っ端2人が、何の策も無しに幹部の部屋に不法侵入かい?大胆だねぇ」
クスクス笑っていったのはこの部屋の主の相棒。
ポートマフィア幹部ーーー太宰紬だった。
「捜し物はコレかな?」
「「!?」」
ジャーン!と効果音が聴こえそうな程に堂々と、紬は紙束を掲げてニッコリと笑った。
「『例の薬について纏めた書類』ーーーそんな話だけでこうも簡単に釣れるなんて素人丸出しだ」
「黙れ!!」
片方が銃の用心金を下ろす。
しかし、紬は笑みを絶やさなかった。
「うふふ。単純な思考を持つ人間の行動もまた単純、か」
小莫迦にした笑みを浮かべて紙束を男達の方に投げ棄てる。
既に引き金に指をかけている男ではない方が慌ててそれを拾った。
しかし、その紙をチラリと見て、拾うのを止めた。
「舐めた真似しやがって!」
それ等を再度床に棄てると男も銃を構えた。
床に広がった紙は凡て真っ白。
「『話だけ』で、こうも簡単に釣れるなんてって云ったじゃない。最初から『例の薬について纏めた書類』なんてものは存在しない。そんなもの、作るの面倒だし」
男達がおちょくる紬の心臓に照準を合わせた。