第21章 終焉
ホテルのエントランスに着くなり車椅子を借りた。
紬の顔を見るなり「これはこれは太宰様」と、見るからに気品のある男が頭を下げて車椅子の運転と目的の部屋までの案内を勤める。
「今回の限定プランの助言、誠に有難うございます」
「お役に立ったかい?」
「勿論でございます。仕入れ先から何からお力添え頂いたお陰でスムーズに事が運びました。プランが始まる明後日から、凡て予約で埋まっていますし順調そのものです」
「ふふっ。あ、4日後に来るから」
「畏まりました。お料理の方は如何致しましょう?」
「3人分」
「承知いたしました」
「宜しく頼むよー」
あれ?予約で全部埋まってるって云ってなかったっけ?
なんて、口に出せずに、××はただただ常識離れした話を聞き流すことにしたのだった。
「此方でございます」
「有難う」
見たこともないフロアの豪華さにも驚かされたが、着いた先の部屋の扉も立派すぎて××は言葉を失った。
紬が下がっていいよ、と云うと男は一礼して去っていった。
懐からカード取り出して扉に翳す。
ピッ、と小さく音が鳴って解錠した。
紬が扉を開けた瞬間に、××に緊張が走った。
さあ、と促され自分で車椅子を運転して中に入る。
見たこともない豪華な部屋。
カーテンのされてない窓から見える綺麗な夜景。
凡てが初めての場所に少し興奮を覚えた××だったが、直ぐに気分が落ちた。
散乱している女性ものの服が目に入ったからだ。
「……。」
寝室のベッド。
其処に横になっているのは女性だった。
自分が良く知っている女性ーーー。
布団すら羽織らずに全裸で眠っている。
しかし、妙なことに男の姿は何処にも無かった。
「男の方は先に退散してもらったよ」
「!」
心を読まれたからか、普通の声の音量で話し掛けられたからか。
ドキリとして紬を見る。
「良く見れば事後だということくらい判るけど」
「必要ないです。大事なのは………俺の記憶が最も大切なもののままか否かだ」
「ふふっ。そうだね」
××が眠っている女に触れた。途端、ポウッと淡い光が女を包む。
「彼女は朝まで目を覚まさない。一度戻ろう」
「はい……」
紬と××は来た道を戻っていったのだったーーー。