第21章 終焉
「私はその女が今、何処で誰と居るか知っているよ」
「!」
紬はニコッと笑って続ける。
「君達が愛し合っているというならば、その女性に異能を掛ければ良い。その後、君と2人きりで会わせよう」
「え!?」
「君のことを忘れてしまったならばその場でその異能を解除すれば良いし、もし忘れて居なかったらーーー作戦の続きを考えるなり逃亡するなりするといい」
「っ……!」
紬の考えが読めずに××は狼狽える。
それもそうだ。
目の前の女は殺そうとしている連中を態々、引き合わせて『作戦の算段』でも『逃走』でも何してもいいと云ったのだ。
しかも、ニコニコと笑いながら。
「私はこのポートマフィアで幹部なんてものをやっているからね。多少の融通は効く。君が望むなら我々に寝返ることも可能だ」
「えっ!?」
ここ一番の驚きを見せる××に少し驚いて、直ぐに笑った。
「私は何か可笑しな事でも云ったかな?君の異能は優れている、故に異母兄達なんかに利用されて哀れだ、勿体ないと嘆いていたの聞いてなかったのかい?」
「え……いや、えっと……」
「その異能の使い方を変えれば、君はマフィアの中でも指折りの存在になれる逸材だ」
「……逸材……」
復唱する××にニコッと笑顔を返す。
「若し、彼女が君のことを忘れていなかった時の行動の1つに、是非ポートマフィア入団も入れておいて呉れ給え」
「………本気で云ってます?」
××は少し冷静に問うた。
「勿論。私は交渉において嘘は付かないよ。今から君を彼女のところへ案内することも、明日、2人で会わせてあげることも。返事はそれら凡てを経てからで構わないから考えておいて」
では行こうか、と。
紬は懐から端末を取り出すと何処かへと連絡を始めた。
程無くして初老の男と鼻の上の絆創膏が特徴の男2人が現れる。
「立原君。彼に肩を貸してあげて」
「はい!」
「広津さん。車の手配済んでる?」
「滞りなく」
「ふふっ。有難う」
こうして4人は部屋を後にして、車に乗り込んだ。
「して、行き先は」
「##プリンスホテル」
「承知しました」
車が発進する。
本当に偉い人間なんだな、と。
すれ違う人間凡てが紬に恭しく頭を下げていたことを思い出して××は確信することが出来たのだった。