第21章 終焉
「嘘だ………そん……な……そんっ……」
「心から愛している女性の声すら分からないのかい?」
四角の物体から発せられているのは卑猥な水音と、女性の喘ぎ声ーーー
録音かリアルタイムかは判らないが
少なくとも女性の相手をしている男は『2人』いた。
その内の1人の声は聞き慣れており、もう1人にも聞き覚えがあるーーー。
「信じない………信じないぞ、俺は。はは……騙されると思うなよ……騙されると」
壊れたように呟く××に呆れたのか紬はその機械の電源を切って懐に入れた。
「可哀想に。でも仕方ない事なのかな?こうも突然では現実を受け入れられないのも無理はない」
「出鱈目を云ったって無駄だ!」
バン、と机を叩いて立ち上がった。
「無理は止め給え。君の片足は折れているのだよ?」
「痛みなら無い!それよりもーーー!!」
「やれやれ。変な気は起こさないで呉れと忠告していた筈なんだけどなあ。此れだから最近の若い子は」
「何っ!?ーーーー!!!!」
会話を始める前に行ったように。
スッ、と紬が××に触れた。
途端に、太腿から全身に痛みが走り回りストンと椅子に座り込む。
「君の脚は治ったわけでも、痛みが収まっていた訳でもない。私が痛覚を停止してあげていただけなんだよ」
「!?」
苦痛に顔を歪めながら紬の方を勢いよく見た。
「私が異能者じゃないなんて『誰に嘘を吹き込まれた』んだい?」
「ぁ………ぁ……!!」
痛みからなのか。
それとも、その情報を寄越した人間を想像したのか。
男は言葉にならない声を上げる。
「落ち着き給え。ほら、ゆっくり息をするんだ」
紬はそんな男の頭をフワリと撫でて笑い掛けた。
するとスッ、と痛みが『止まった』。
「貴女も………本当に異能者……」
「ふふ。このポートマフィアの中でも私の異能を知る人間は少ないからね。内緒だよ?」
「っ!」
口許に指を当てて艶めかしい笑みを浮かべた。
××の身体から余計な力が抜けていった。
「君ほどの異能を大切にしないなんて私には理解できないね」
「……。」
「でも君は未だ、私の云う事は信用できないのだろう?」
紬の問いに男はコクンと頷いた。
「それなら君の異能で確かめるのは如何?」
「え?」
男がキョトンとする。