第21章 終焉
「ふふっ…君は私より若いのに賢いね。それで良い。きちんと話しさえ出来れば私は君を殺す心算は無いよ」
「っ!?」
その仕草を見て紬はフワリと笑いながら云った。
直後、小さな部屋に男が息を飲んだ音が響く。
離れた位置にある別室でこの部屋を監視している人間が2人。
音声も映像と同じく録音はされているが『off』の状態にしているため画面に映る映像のみを見ている訳なのだが
「嵌まったな」
「え?」
コホコホと咳をしながら呟いた男に、もう一人の監視人である女が聞き返した。
画面に集中するように云われ、女は少ししょんぼりとしながら画面を見ることに意識を戻した。
「却説。早速だけど君は何故、我々に拘束されているか正しく理解しているかな?」
「『黄泉』の…」
「ふふ。その通りだよ」
「……?」
紬は懐から2枚の紙をペラリと出して男に提示した。紙一面に小さい文字でびっしりと書かれている何かのリストであろうその紙を、男は机に置いたままの状態で眺める。
そして、みるみるうちに顔を青く染めていった。
全部見終わったのか。
男は驚愕と恐怖で表情を固めたまま紬の方を見た。
「そう、それは『黄泉』に関わった凡ての人間のリストだ。云わなくても判っているだろうけど横線を引かれている人間は既にこの世には居ないよ」
「っ!!」
脅しではないだろう。
男には心当たりがあった。
昨日まで連絡が取れていた、一昨日まで行動を共にしていた仲間が今朝、急に音信不通になったのだ。
そのリストは非の打ち所がない程に正確だった。
紬の云う通りに関係者が漏れなく記載されていた。常に仲間を増やしている状態だったので、男が認識していない人間の名前まである。
更に、関係者だけに留まらず、この『黄泉』の精製に関わった時点で、それらについて仄めかした可能性のある家族や友人の名前まで綺麗に載っていた。
たかが紙切れ2枚。
しかし、だ。
それは誤魔化すことは不可能だと思い知らせるには充分すぎるモノであった。
「私が『黄泉』の存在を認知した時点でそのリストを製作したんだけど、見ての通り人数が多過ぎてね。明るみにならないように処分するのに時間が掛かってしまった」
男がガタガタと震え始めた。
恐怖が、さらに膨張する。