第21章 終焉
一方その頃ーーー
「……。」
「うーん……」
紬は腕を組んで座っていた。
机を挟んで座っている男の顔と脚を交互に注目している。
黒い服を着た部下ではなく白衣にサングラスといったアンバランスな格好をした男が、その脚を包帯と添い木で固定していた。
ポートマフィアの医療班だ。
「何を如何したらそんな変な方向に脚が曲がる事があるんだい?」
「……。」
首を傾げながら問うも、男は痛みのあまりか泣き続けたまま何も答えない。
「太宰幹部……これ、結構綺麗に折れてますよ」
手当てが終わった医療班の男は処置が終わると紬に報告をした。
「綺麗に?あ、察した」
そう云った紬に一礼して医療班の男は退室した。
今、紬が居るのは3畳ほどの広さの部屋だ。
凡ての壁が混凝土剥き出して、あるのは今座っている椅子2脚と机、そして出入りするための扉のみだ。
机と椅子は混凝土の床に確りと固定されており、扉も同じく特殊なのか、分厚く頑丈な印象を与えるモノだ。
しかし、地下牢屋よりは明るい。
そんな特殊な扉が閉まる音が重々しく響き渡った後、紬は呆れた口調で男に向かって云い放った。
「君、監視に来た男に喧嘩売ったでしょ。ほら帽子被った小柄な男」
「!?」
男がビクッと肩を震わせたのを見て「矢っ張り」と紬は呟いた。
「君を捕らえた黒い子よりも厄介だって云うのに莫迦だなあ」
そう云って紬が男の額にトン、と軽く触れた。
「………えっ!?」
程無くして訪れた体の異変に男が驚く。
「変な気は起こさないで呉れ給えよ。その処置は、あくまで君と話したいと私が思っているからだ。それが叶わないのならば君に用事なんてないから殺す」
「……。」
目の前に座る女の言葉の真偽についてーーー。
男は一瞬、考えた。
しかし、その言葉が偽りならば手当てをしたりしないだろう。
如何いう絡繰りか不明だが………酷く疼いていた脚が、スッと痛むのを止めたのだ。
男は同意を示す意味を込めてコク、と頷いた。