第21章 終焉
ヨコハマの夜景が一望できるホテルの上階ーーー
「中原様。如何だったでしょうか」
ワインを注ぐソムリエ。
その隣で長いコック帽を被ったシェフとスーツの男が一礼して中也の反応を待っていた。
「見た目も味も良かったぜ。ワインにも合う」
「!勿体ないお言葉です」
ワインを口に運びながら云った中也の言葉を聞いて、全員が頭を下げた。
「そうだ!中原様が以前飲んでみたいと仰っていたワインも入手することができたんです!」
「お!マジか!」
「後でお部屋へとお運び致しますね」
「サンキュ。あ、ツマミも適当に見繕ってくれ」
「畏まりました」
スーツの男が一礼し終わると、3人はその場を去っていった。
このホテルは裕福層に人気がある。
しかし、試食会ということもあってか、或いはポートマフィアの幹部のためか。
普段なら予約が取れないほどに人気のあるこの展望レストランには2人しか居なかった。
「中原さん」
「ン?なんだ?」
「あの……本当に有難うございます」
「満足したか?」
「は…はいっ!こんな素敵なコース料理なんて初めて頂きました…!」
「そりゃ良かった」
山吹は目をキラキラさせながら答えた。
その顔をみて笑うと中也はワインを飲み干した。
「手前の家はどの辺だ?」
「え?えっと……」
山吹が住んでいる地区の名を告げると中也は端末を取り出す。
「部下に連絡するから一寸待ってろ。送らせるから」
「え!?あのっ、中原さんは?」
「ホテルに泊まるまでが任務なンだよ」
「!」
泊まる、と云う単語を聞いた瞬間に思わず立ち上がる山吹。
その行動に一瞬だけ目を丸くした中也だったが、フッと笑って口を開いた。
「一緒に泊まるか?」
「っ!?」
中也の提案に頬を染める山吹。
「日頃は予約で満室のスイートだからな。快適に過ごせるーーーけどな」
「……けど……?」
脈が速く鳴っていくのが判って、山吹はギュッと手を握り締める。
「男(オレ)と泊まることが如何いうことか理解した上で決めろよ」
山吹の顔は茹で蛸よりも真っ赤になっていくのを見て中也は喉を鳴らしながら笑っている。
そして。
中也は端末を仕舞うと山吹の手を取ってレストランを後にしたのだった。