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【文スト】対黒・陰

第20章 忘却


「素敵帽子君は信じるの?」

「あ?何がだよ」

「太宰の記憶喪失が『大切なモノの記憶を奪う異能者』が原因って」

「信じるも何も実際そうなんだろ?」

「そうだけど。でも太宰の『人間失格』は絶対だってことも知ってるんでしょ?」

「ああ」

乱歩の云う通り。
『人間失格』は異能相手なら敵無しの異能だ。
勿論、中也とてそんな事、重々承知している。

「じゃあ何故?」

乱歩は決定的な何かを中也の口から直接聞きたいようだった。


「太宰の野郎が演技で紬を忘れたなんて云うわけが無えンだよ。お宅らも観ただろう?コイツの乱れ様ーーー紬は本気で太宰を殺す気だった」

「仮に反対だったら?」

「あー……太宰は紬を殺すワケ無ェから監禁コースだな」

中也の言葉を聞いて全員が太宰を注目する。


「「「………。」」」

「え。蛞蝓の云うことなんて真に受けないで………ってそんな顔で見ないでよ!?しないから!!………多分」

あー、コイツならヤるな。という顔で太宰を見る。

「まあ、僕もそう思う」

「んで?ホントのところは?」

「太宰は死んだーーー撃たれてね」

「はァ?」

乱歩の言葉に首を傾げる中也。
その反応をみて乱歩は話し相手を変えた。


「これで判った?太宰妹」

「………お陰様でね名探偵さん」


紬が漸く顔を上げた。
ムスッとしているが凡てを理解するほどには落ち着いたのだろう。
中也はやれやれと云わんばかりに溜め息を着いた。

紬は与謝野の方を向いた。

「有難う。治を救ってくれて」

「いや、妾は医者の職務を全うしただけさ」

「そう」


フッと笑うと紬は太宰に近寄ってソッと手を伸ばした。
探偵社の面々は一瞬、身構えた。
が、今回は中也が動かなかったため様子を見ることにしたようだ。
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