第20章 忘却
「社長!?」
案内係の青年が、慌てて駆け寄った。
それに国木田と太宰が続く。
社長と呼ばれた男を必死に揺さぶる青年を退かし、国木田が外傷と脈を確認する。
「気を失っているだけだ」
「っ!……良かった」
男は力が抜けたようにペタンと座り込む。
「如何云うことだ?取引時刻には未だ早いが」
「敵襲か、或いはーーー」
国木田が太宰を見上げる。
太宰が顎に手を当てて「うーん」と考え始めたその時だった。
パンッ
乾いた銃声が1つ、鳴り響いた。
「っ!?」
「!」
「太宰っ!!」
太宰の肩にその弾が中った。
国木田が懐から銃を取り出し、狙撃されただろう方向を向くが人の気配は、無い。
パンッ
「ぁ……!」
もう一発。
それとともにどさりと太宰が倒れ込んだ。
「糞ッ!」
銃を投げ捨て、太宰の撃たれた箇所を確かめる。
「あ……あ……!」
青年は真っ青な顔をして太宰を見る。
肩と胸。
弾は貫通しているが…………。
「糞ッ!止血を手伝ってくれ!!」
「……!はいっ……!!」
急所を抉っているようで血が止まらない。
太宰の意識は朦朧としはじめている。
国木田は直ぐに何処かに電話を掛けて、応急処置を施す。
「太宰、死ぬなよ!」
圧迫止血を青年ともに行う。
「うふ………ふ………ふふ……」
「「!?」」
突如として太宰が笑い始める。
ぼんやりとした視界に捕らえたモノをみて、漸く理解したのだ。
「そ………か………。………云ってた………違和感……」
「喋るな!!」
真っ白な顔で微笑む太宰を一喝する国木田。
「………そう………こと……」
「「!?」」
カクッと。
太宰の身体から凡ての力が抜けたーーー。