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【文スト】対黒・陰

第20章 忘却


カランカラン……

その音の鳴った方向を山吹と部下達は向いて、驚いた。

「「「!?」」」

現れたのは良く見知っている人物ーーー。


「酒弱い癖にすぐ調子のって飲むんだから」

呆れた顔をしながら真っ直ぐ中也に向かって歩み寄ってきたのは云わずと知れる中也の相棒。

「態々済まないな紬君」

「そう思うなら一々連絡してこないでよ。私は何もこのチビの保護者じゃないのだよ?」

「でも飼い犬なんだろう?」

「まあ、それはそうだけど」

ふぅ、と息を吐くと躊躇いなく中也を揺さぶる紬。

「ほら、ちゅーや。帰るよ」

「………ぁ?」

ガクガクと乱暴に揺さぶって漸く目を開ける中也。
視界に紬を入れるが直ぐにまた伏せる。

「全く。仕様が無いなぁ」

紬は中也の腕を取って自分の肩に掛ける。
そして、中也の外套の内ポケットをまさぐり財布を取り出すと勝手に開けて適当に札を引っ張り出した。

「お釣りは海にでも撒いておいて」

「承知した」

じゃあねー、と。
紬は何でもないように中也を若干引きずりながら店から去っていったのだった。


シン…と一瞬静まり返る。


そして、今度は部下その2が一番に口を開いた。


「あの。何で太宰さんが……」

「中原君の住処を知っている人間が紬君しか居ないんだよ」

「「「え」」」

酒を飲みながら答えた広津の問いに間抜けな声を返す3人。

「えっ……首領や尾崎さんもですか?」

「少しはご存知だろうけど、だからと云って迎えに呼ぶわけにはいかないだろう?」

「「確かに」」

部下2人は納得する。

「広津さん達でも遊びに行ったこと無いんですか?」

「無い。紬君の家にならあるが」

「へー!太宰さんの家ってどんなのか気になります!」

「すっごい高そうな高層マンション」

「あー!そんなイメージはありますねぇ!」


再び話が盛り上がり始める。
そんな中。


「……。」


何を考えているか分からない表情で山吹はグラスに入っている酒を眺めていたのだった。


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