第20章 忘却
今日も溜まりに溜まった書類整理に追われた。
「中原幹部、此方はーーー」
「中原さん、あの会社、こんな回答を寄越してきてますがーーー」
「中原君。此れも急ぎではないのかね?」
「兄貴、紬姐さんが此れもってーーー」
「中也さん!これ期限がっ……!」
中也はひたすら手を動かし続けた。
部下達も何かと慌ただしい。
「……………終わった」
何も乗っていない机に突っ伏し、呻くことができたのは今日と云う日が終わりを告げようとしている程の時刻だった。
「お疲れ様でした」
「………おう。手前等もな」
んーっと背伸びをして、この状況を共に乗り越えた部下達を労う。そして、何かを思い立ったのか。スクッと立ち上がった中也をその場にいた全員が注目した。
「よし。飲みに行くか」
奢りと云う単語を出されて部下達は喜びの声を上げる。
そして、その集団は一斉に中也の執務室を後にしたのだった。
ーーー
部下2人に、広津と立原。
そして、途中で運良く遭遇した梶井と山吹は
中也が行きつけのバーに来ていた。
酒にツマミに、各々好きなものを注文して盛り上がること1時間は経っていた。
「あ"ー!思い出しただけでも腹が立つ!!」
ダァン!とまだ酒の入っているコップを勢い良く置きながら中也が叫ぶ。
あ、始まった。
広津と梶井はすっかり出来上がっている中也をみて小さく息を着いた。
「あの糞女、今日も今日とてきっちり嫌がらせしてきやがって!」
「……中原君。そろそろ止めた方が」
「うるせぇ!俺は未だ酔ってねェ!」
グラスの酒を一気に煽って次の酒を注文する。
「あの…中原さん……」
「あ?」
はじめて一緒に飲む、だけでなく仕事外で過ごす山吹は中也の泥酔振りを心配する。
「その辺で止められた方が……」
「良いンだよ。明日は非番だ」
「あ。」
追加の酒を口にしながら云った中也の言葉で、山吹は脳内に納めている明日……既に今日になってしまった予定を思い出した。
………そっか。今日は会えないのか。
その思いが顔に出てしまったのだろう。
「……何だよ、その顔」
「!?」
無意識に眉をハの字にしてしまった事を中也に気付かれてしまったのだ。
アルコォルのせいで少し火照っていた顔に更に熱が集まる。