第20章 忘却
「太宰幹部で例を挙げるならば、普段はニコニコしている笑顔が素敵な女性なのに、仕事をされると残酷なことも平気て行えてしまう冷酷な部分があるっていう、人は見かけによらないなぁーっていうーーー」
「………云わんとすることは何となく判った」
紬について熱く語りだした伝令の言葉を遮るように中也は云った。
「要は性格の悪さを知らずに顔に騙されたっつー事だろ?」
「全然違いますよ!」
「いや、矢っ張り手前は疲れてるって。あの糞女の性格の悪さをギャップなんかで片付けられるんだからな」
「そんな事ないです!」
伝令の力強い否定に中也はハイハイ、と適当に返した。
「あ、中原幹部も凄かったです!あんなに体格差ある人間を簡単に仕留めるなんて!」
「序でのように云わなくてもいいっつーの」
「いや!本当ですって!良いな……俺にも異能があれば少しは………」
「……。」
男の呟きにピクッと反応する中也だったが、
はぁ、と溜め息を着いて呆れた顔を伝令に向けた。
「異能の有無なんざ大したことじゃねぇよ」
「いや、でも格好いいですよ!」
「そりゃ俺のような派手な異能なら、だろ?」
「え?」
何を云われているのか分からない様子の男はキョトンとした顔を向ける。
「手前が神秘的なんて云って持ち上げてる彼奴は、異能なんざ使わなくてもアッサリと仕事をこなしてンだろーが」
「!」
中也の言葉に伝令が目を見開いた。
「太宰幹部って、何て云うか……未来が見えてる系の異能でもお持ちなんだと思ってたンですけど」
「ンなわけあるか。彼奴の場合、ただ単に頭が良過ぎるだけだ。異能でも何でもねぇよ」
「え……」
中也は珈琲を飲みながら話す。
「異能どころか自分の手すら汚さずに人を殺せるからな彼奴は」
「!?」
「紬に関しては色ンな噂が飛び交ってるが彼奴自身、噂は否定も肯定もしねぇ。好き放題云わせてやがるーーー何時でもソレを利用出来るようにな」
「噂ですらも利用を………」
伝令はごくりと息を飲み込んだ。