第19章 策動
太宰を含めた探偵社員を見送って紬は中也の方を見る。
「それで?また任務を代われだなんて云いに来た訳じゃないだろうね?」
「今回は首領直々の任務だ」
「うぇ。このまま帰って寝ようと思ってたのに」
「残念だったな」
中也はハッと鼻で笑いながら云うと、懐から折り畳んだ紙を紬に渡した。
受け取って、暫く眺める。
「ふーん」
読み終わったのだろう。そう云うと紙を中也に返した。
「仕方ない。さっさと終わらせよう」
「だな」
紬は中也の車の方に向かって歩き出した。
「手前等は本部に戻って報告な。終わったら帰っていいぜ」
「「承知しました」」
紬のお供だった部下2人に指示を出す。
そして
「山吹もお疲れさん」
「お気をつけて」
一礼して挨拶をした山吹の頭をフワッと撫でてフッと笑うと中也も直ぐに紬の後を辿った。
車が発進するまで頭を下げて見送ってから部下達も自分達の車に乗り込んだ。
「山吹さん」
「はい?」
「書類整理の方の進捗は?」
「先ず先ずと云ったところでしょうか。明日、早朝から出社すれば間に合うと中原さんは仰ってましたが」
話を聞くと部下達は顔を見合わせる。
「今日は徹夜だな」
「ああ。上手い飯も喰わせてもらったし頑張るとするかー」
「!」
その言葉を聞いて山吹が目を見開く。
「えっ……戻ってから仕事に残る心算ですか?」
「あ、はい。中也さんがお戻りになるまでに少しは進めておこうかと」
「太宰さんも半日も予定が変わっていますし大変でしょうから」
中也の指示に従わない予定を述べた2人に唖然とするも、自分も仕事をしながら中也の帰りを待っておきたい気持ちが高まる山吹。
「私もご一緒します!」
「それは構いませんが……あ、でも怒られはしますよ?」
苦笑して一応の未来予想を伝える部下その1。
「構いません。今も中原さんは勤務をなさっているのですから!」
勢いある山吹を微笑ましく思う2人は頑張りましょうね、と声かけを行う。
「大量の書類で既にお疲れでしょう。着くまで休んで良いですよ。起こしますから」
「あ、じゃあ少しだけ…」
山吹は今からに備え、言葉に甘えて目を閉じたのだった。