第19章 策動
「あー。早く飲みたいなぁ」
「うふふっ。直ぐに来るよ」
能天気に話す2人。
そして、未だにお品書きを見ていた敦に気付く。
「敦君。何か気になるものでもあったかい?」
「あったなら遠慮なく注文し給えよ」
「あ、いえ……メニューが気になるというか………」
「「?」」
そろぉ…っとお品書きから太宰兄妹に視線を移す敦。
「このお品書き……値段が記載されていないんですけど………」
国木田が懸念し、顔色が悪い理由が判ったのだ。
「値段なんて気にしていたら食べた気になれないでしょ」
紬がクスクスと笑いながら云った。
「心配しなくて良いよ。君達は好きなものを遠慮なく食べてくれればいい」
「はあ……」
「何を企んでいるんだ?」
急に現実に戻ってきた国木田が険しい顔で紬に問う。
「君達に対してならば『何も』?」
紬がキョトンとした顔で答える。
「太宰……」
「大丈夫だって。紬が国木田君に用があるわけ無いでしょ」
「そんなに心配なら念書でも書こうか?『如何なる場合に於いても君達、探偵社員に鐚一文払わせたり致しません』って」
「……。」
嘘は云っていないだろう。
それだけは何となく判った。
そうこうしていた間に飲み物が届く。
太宰が自分のと紬、そして国木田のグラスに酒を注ぐ。
「国木田君」
それを見ながら紬は国木田の名を呼んだ。
「君の察している通り、私ーーー『ポートマフィア』は『武装探偵社』の治と取引を行った」
「!?」
国木田の眉間に皺がよる。
そして、直ぐに太宰を視界に捕らえた。
「例の異能力者についての情報を少しばかり頂戴したんだよ」
「!」
ここ数日、全く進展しなかった為、確かに必要な事だとは思うがーーー
「それとこの状況……何の関係がある」
「関係大有りさ!この状況が交換条件なんだから」
・・・。
一瞬でシン、となる。
「は?」
漸く出た声。
「だからぁ~君達が好きなものを好きなだけ注文して好きなだけ食べることを条件に情報を貰ったんだよ!」
「だから遠慮なく食べてくれ給え」
ニコッと笑って話す太宰兄妹に突っ込みを入れられる者は誰も居なかったのだった。