第4章 再会
その夜。
紬は馴染みのバーに来ていた。
「珍しくグラスを空けるのが早いですね」
「そう?」
バーテンダーに指摘されながら新しい酒を注いでもらい口を付け、ボーッとした様子でグラスを見る。
「ヤケ酒か。らしくねェな」
「!」
ガタッと立てられた音でハッとすると見知った人間が隣に座っていた。
「中也」
同じものを頼んで飲み始める。
「何か用かい?」
「………知ってたな?」
「何を」
「青鯖の居場所だ」
一気に煽ってダンッとグラスを机に置く。
「……。」
無言と云うことは肯定なのだろう。
正直のところ、そんなことでは中也は驚きもしない
たとえ、それが『組織の裏切り者の事』だとしても。
この双子のことだ。
何を共有していても可笑しくない。
そんな『些細』なことで怒りはしなかった……が。
グラスを回しながら動く氷を見詰めている紬の、その表情には感情が無い。
それに気付き、チッと舌打ちする。
―――この苛立ちは何だろうか。
「何考えてんだぁ?手前ェは」
「別に?何も」
「だったら好きな酒くらい愉しそうに飲めや」
「……。」
紬はチラリと中也を見た。
「やけに優しいねぇ。如何したの?そんなことせずとも逃亡幇助したのは中也だなんて喋ったりしないよ?」
「手前ェ……本当に何時から観てやがった……」
昼間のやり取りを思い出したのか。
中也はワナワナと震えながら2杯目の酒を煽る。
「観てなどいないよ。私は君達が気付く僅か前に着いたから」
「!」
紬もグラスを空けて、更に追加する。
「治の行動なんか目的さえ判れば手に取るように判る」
「……。」
凡て見越していた、と云いたいのだろう。
この言葉に嘘など無いことは相棒である中也が一番身を以て知っていることだった。