第4章 再会
「中也……」
「んだよ」
「何で治は私に会うことを想定してなかったと思う?」
「……。」
あの時の表情から察するに紬の云った通り、
太宰は紬に会うことを予想していなかったのは間違いない。
「俺が知るかよ」
舌打ちして吐き捨てた言葉に紬は「だよね」と苦笑する。
抑も、判っていたならば紬が会いにいかなければよかったのでは…と思いこそすれど口には出さなかった。
そうすれば珍しくこんなに落ち込むことなど無かったはずだ。
それに――――
「だが」
「ん?」
中也が呆れた顔を紬に向ける。
「拒絶したのは間違いなく手前ェの方だろうが」
「……。」
なんだかんだ云って、中也と太宰兄妹の付き合いは長い。
だから、断言ができる。
紬が太宰に対して『兄さん』などと呼んだことなど今まで一度も無い、と。
「そんな湿気た面するくらいなら云わなきゃ善かっただろーが」
「……。」
紬は中也の指摘に何も返せない。
2人の会話が途切れる。
カラン、と。
グラスの氷が奏でた音が妙に響いた。