• テキストサイズ

【文スト】対黒・陰

第19章 策動


思わぬ光景に伝令の男は固まってしまっている。
逃走を企てた男の行動で少しだけ意識を戻していた大学講師の男もその光景を見ていた。
しかし、此方も伝令同様に眼を見開いて固まっている。

そんな中で動けたのは矢張り紬と中也だけだった。
中也に歩み寄り、ただの肉の塊とかしたモノを一瞥して紬は口を開いた。


「ご苦労様、中也」

「何がご苦労様だ。人に仕事押し付けやがって」

「うふふ。私からの復帰祝いだよ。ウォーミングアップには丁度良かっただろう?」

「あ?こんなの肩慣らしにもならねーっつーの」


ケッと悪態つきながら云う中也をクスクスと笑う。
そして、くるっと伝令の方を振り返る。


「君、此れを片したら上がっていいから」


伝令は普段の習慣だけで紬に返事する。
動けないのだ。
見ていた一連の出来事に頭が付いていけずに。

疑問が湧いてくる。
もしや、男が逃走すると判っていたのか。


「で?こんなところまで私に会いに来るなんて急ぎかい?」

「ああ。頼み事があってな」


「!?」

太宰幹部が中原幹部を予め呼んでいたわけではない!?


伝令の男は自分の意思とは関係なしに震えだした。

ーーー『恐怖』だ。
有り得ないと否定したいのに出来ない恐怖。



打ち合わせをしていたわけでもないのに滞りなく任務を終えた紬に。
何も知らない筈なのに偶々居合わせただけで紬の意図の通りに任務を遂行した中也に。






大した事無かったかのように去っていった幹部たちを呆然と見送って暫く経った後ーーー



「あれが…………………『双黒』」



ポツリと呟いた伝令の言葉を受け止めるかのように
大学講師の男がゴクリと唾を飲み込んだ。
/ 357ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp