第19章 策動
翌日ーーー
「「ちゅーやさぁあぁああんんっ!!」」
「うぉっ!?何だよ!揃いも揃って気持ち悪ィ!!」
出勤して早々、ここ3日、紬の手伝いをしていた部下2人を含めた黒尽く目の男たちに囲まれていた。
もう大丈夫なのかとか、紬が怖すぎたとか
各々の3日間を端的に述べる。
「悪ィな。迷惑かけた」
中也はそう云って自身の執務室の扉を開けた。
一番始めに目に入ってきたのは机の上にところ狭しと積まれた白。
「……まあ想像はしていたが。紬の奴、殆どの仕事を俺に押し付けてやがるな」
「済みません。出来る分だけは片付けた積もりなんですが我々だけでは如何しようもないものばかりで」
「手前等が謝ること無ェよ。それを見越しての嫌がらせだろ」
幾つかの書類を掴んでザッと目を通しながら中也は答えた。
「そう云えば山吹は何処だ?」
「山吹さんなら先程、首領に呼ばれて」
中也の質問に少しにやけながら部下その1が答えた。
「何だよ、その顔」
「えっ!?顔に出てましたか!?いやー済みません!」
「………何だよ」
「だって、なあ?」
「うん」
部下その1とその2が顔を見合わせる。
そして直ぐに中也を見て、ニヤニヤしはじめた。
「だーっ!!何だってんだ、その反応はっ!」
「「いやー中也さんにも春が来たんだなーと思って」」
「っ!?」
一瞬で悟った。
嗚呼、矢張り復帰の事を山吹に云ったのは此奴等なんだと。
「今までなら太宰さんに文句云いに行っていたのに」
「それよりも一番に山吹さんを捜すなんてー」
「うるせェ!」
照れ隠しのように怒鳴る中也に対し、揶揄う姿勢を保つ部下2人。
そんなやり取りをしていた時に、件の人物が入室してきた。
「お!噂をすればーー………」
「……。」
這入ってきたのは間違いなく山吹だ。
しかし、様子が可笑しい。
それを悟った中也も、部下達も一瞬で静まる。
「お早うございます中原さん」
「………如何した手前」
力なく笑って云った山吹の言葉に返事するわけでなく質問を繰り出す中也。
手に持っているのは中也や紬が良く目にする『指図書』だ。
何かを察したのか、
中也が部下達に退室を命じ、部下達もそれに応じた。