第19章 策動
交渉を無事に終えて紬は車で手帳を広げていた。
「ねぇ君達」
「何でしょうか」
助手席に座っている男が紬に応じる。
一昨日から紬の補佐をしている中也の部下その1だ。
因みに、運転主はその2。
「中也の容態なんだけど」
「「!?」」
初日に連絡が来て以来、電子文でのやり取りは行ったものの電話はしなかったため気掛かりだった。
そんな思いを知ってか知らずか、紬が何の脈絡無しに話題を出してきたのだ。
「え、何?凄い反応だけど。あ、もしかして聞きたくない?」
「「逆です!」」
今日一番の反応の良さを示した2人にキョトンとした紬だったが、その必死な返事をきいて笑いだす。
「うふふ。そんなに過剰に反応しなくても」
紬の指摘に済みません、と云う部下2人だが
ソワソワしているのは隠せないでいた。
「明日から普通に出てくるって」
「「!」」
パアッと笑顔になる2人。
しかし、直ぐにハッとして部下その1が紬の方を振り返りながら話し掛けた。
「あのっ!容態は……」
「うん?出てこれるんだから元気でしょ」
「いやっ、しかし中也さんは無理をされるし、不調でも黙ってるし!」
「何で3日も休みなんだって怒ってるほど元気、というより寧ろ五月蝿いくらいだから心配要らないよ」
今度こそパアッと明るい笑顔で喜ぶ2人。
「で、悪いんだけど私が会議にいっている間、纏めておいて欲しいモノがあるんだよねえ」
「「はい、喜んで!」」
「あ、あと机の上に乗ってる書類は全部中也の分だから中也の部屋に運んでおいて」
「「判りました!」」
そう返事したのは約10分前。
じゃ、よろしくーと会議室に去っていった紬を見送ってから執務室に向かった2人は
「「・・・。」」
現在、固まっていた。
自分達の目線の高さまで積まれた紙束がところ狭しと積まれているのだ。
2分位固まって、漸くその1が口を開いた。
その1の問いかけに応じたことによりその2も動き出す。
「真逆、これ全部……ってことか?」
「机の上だから……あ。」
その1が指差す先は、紬の仕事机ではなく来客用のテーブル。
同じ様に紙束がつまれている。
「………運ぶか」
「………だな」
部下達は紙束を抱えた。