第19章 策動
「持っていた銃だって、見ただけで本物だなんて分かるわけないだろうし。素人としか思えないんだけどなあ」
「………何が云いたい」
国木田が眼鏡を正して太宰に訊いた。
「自分達から名乗ったんじゃない?そうーーー『マフィア』とか、ね」
「……。」
嫌な予感しかしない。
「でも……」
「まだ何かあるのか」
口元に手を当てて太宰が続けた言葉を正確に拾う国木田。
「紬が何も云ってなかったってことは………」
「……。」
ポートマフィアの妹か、と国木田は溜め息を着く。
「太宰」
「ん?何だい?」
「その妹は敵対組織のお前に正しい情報を呉れるのか?」
「内容にも依るだろうね」
「例えば」
「私に危険が迫っている場合」
「………それは………信用出来るのか?」
「勿論。紬は嘘はつかないから、くれた情報ならば凡て本当さ」
「……。」
「だから訊いてみる価値はあるかな」
「まて。ポートマフィアに借りを作るなんて真似、出来るわけないだろう!」
太宰は国木田の言葉にキョトンとする。
そして、ぷっと吹き出して笑った。
「なっ!?何が可笑しい!?」
「あははは!考えすぎだよ国木田君。私が紬と話すのに探偵社だとかマフィアだとか考えてるわけないでしょ」
「いやっ……しかし!相手は……!」
「私達は対。紬は唯一無二の……私の半身なのだよ。これだけは絶対に他人に干渉される気は無い」
「っ…!?」
スッと。
鋭い眼で国木田を射抜く。
流石の国木田も言葉を詰まらせた。
普段の太宰からは考えられない程の『狂気』がその言葉には混ざっていたからだ。
「じゃあ私は可愛い妹の声を聞きたいから一寸電話してくるねー」
「なっ!?お、おい!」
ヒラッと手を振ると太宰は国木田を置いて去っていったのだった。