第18章 本心
「掃除まで済ませてたんなら会ってあげれば良かったじゃん」
「まあ………少しは考えたけどよ。紬が未だ止めとけっつーから」
太宰と中也が同時に紬を見る。
「彼女、婚約者が居るって云ってたんだよ」
「へぇー。何時判ったの?」
「今日」
「手前は何でも聞き出すな、ホント」
「そんなの話の持って行き方で如何にでもなるからね」
ワインを口にしながらサラッと云う。
「私と中也のやり取りで恋心を自覚させ、逢いたい気持ちを増幅させる。完璧なアシストでしょ?………って、私は中也の味方をしてあげたのに何で2人とも変な顔をしてるんだい?」
「いや、何でもねェよ。なぁ?太宰」
「うん、中也の云う通り。紬の気のせいだよ」
「?」
「それより中也。このワイン美味しいよ。センスあるね」
「そうだろ?まだあるから遠慮無く飲めよ」
などと、らしからぬ言葉を交えながら話題を変えた太宰と中也に首を傾げる紬だったが、特に何かを云うわけではなく食事を続けた。
云えるわけ無い。
笑いながら話しているのに、
一瞬で場を凍らせる程の何かを瞳に宿しているなんて。
何かあったのか。
或いは何かあるのか。
深く訊いてこなかった事に安堵して、2人も紬の顔色を窺いながら他愛ない話をしながら食事を取ったのであった。