第18章 本心
食事を終えて風呂に行った紬を見届け、暫く経った後。
太宰は中也とソファに座り、ワインを飲み続けていた。
「……何であんなに機嫌悪いの?」
「知らねェ……。山吹が何かした程度でアイツがあんなに怒るとは思えねーし」
「うーん……」
「手前は心当たり無ェのかよ」
「否、あるにはあるんだけど。それとこれが如何繋がるかが全く判んない」
「手前が判んねーなら俺はお手上げだな」
「取り敢えず、仕事を早く片付けてよ」
「あ?例の薬のやつか?」
「そ。今、紬が動いてるのって全部それ関係なんでしょ」
「………まぁ。けど忙しすぎて機嫌が悪ィなんて珍しい話だけどなァ」
「何かが紬の地雷を踏み抜いた、あるいは踏み抜く前ってことでしょ」
「あ"ーっ!何で3日も休みなんだクソッ!明日にでも復帰できれば溜まってる仕事もそんなに多くねー筈なのに」
「この調子じゃかなりの量を押し付けられるねっ!ぷぷっ。何徹しないと駄目かなー?」
「愉しそうにしてんじゃねーよクソが!余裕かましてンのも今の内だぞ太宰。俺が復帰したとして、どうせ紬の仕事の進捗とは関係無ェからな。機嫌が悪い理由の解決にならねーどころか、俺が不在だった分が圧して、更に多忙さが悪化するだけだからな?」
「………。」
「………。」
確かにそうだ。
云い返したいけど正論過ぎて。
云ったものの本当の事過ぎて。
2人は同時に頭を抱えたのだった。
「取り敢えず、紬の機嫌だね」
「ああ。何か分かったら連絡する」
「そうして。私もそれとなく探ってみるから」
「了解」
「如何したんだい?2人して頭を抱えちゃって。何か悩み事?」
「「っ!?」」
会話に集中しすぎて何時の間にか後ろに居た紬に気付かなかった2人は盛大に焦った。
「大丈夫かい?顔が蒼いようだけど」
「「いや、飲み過ぎたみたいで」」
「え。」
顔、蒼いのに?と思っただろう。
しかし紬は「ふーん」と云っただけだった。
「疲れてるから先に寝るよ。治も中也も飲み過ぎたなら、これ以上は控えるんだよ」
「「はい判りました。おやすみなさい」」
「おやすみ~変なお2人さん」
パタン。
その音が部屋に響いて暫くの間、2人は固まったままだった。