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【文スト】対黒・陰

第18章 本心


「遅かったねえ」

「飯出来てるから早く着替えてこい」

「うん。あ、これ。頼まれたキッチンペーパーと柔軟剤ね」

「おー。悪ィな」

急に声が高くなった太宰は、購い物袋を中也に渡すと寝室の方へと消えていった。

「なに中也。私をパシリに使っただけじゃ飽きたらず紬もパシったわけ?」

「昼、電話したときに訊かれたからな。丁度良かったぜ」

「なにそれ、最悪」

太宰が頬を膨らませる。

「なんだよ。手前に連絡したら素直に購ってきたのかァ?」

「中也、ソコじゃないよ。電話したことを拗ねてるんでしょ治は」

白のシャツにハーフパンツとラフな格好をした『紬』が戻ってくると太宰の隣に座って答えた。

「いや、俺が掛けたんじゃねぇし。文句なら隣に云えや」

「………紬」

中也に云われた通りに隣に座った紬をジッと見る太宰。

「はいはい、拗ねないの」

その視線をサラッとかわして手を合わせると、ムッとしながらも同じ動作を始める太宰と、それを呆れ眼で観ていた中也。


「「「いただきます」」」


3人の声が綺麗に重なった。


「中也。今日、あの部屋まで掃除したの?」

「んあ?ああ、久し振りにな」

「未だ残ってたの?彼処」

「矢っ張り、便利だからなァ」



あの部屋とは先刻まで太宰に扮した紬が居た部屋の事だ。

紬と中也には、敵対組織の中枢に近づいて情報を引き出す、というような任務が回ってくることがある。
中也の場合、関係を築き、高級ホテルにでも誘い込めさえすれば充分事足りる案件が殆どだが、稀にそれでは不十分な時もある。

そして紬の場合、「紬からポートマフィアの情報を引き出そうと企てて近付いてくる相手」がターゲットだ。
云うなれば紬は受け身。
だから色々と関係を築く為に施されたモノに対して適当に反応し、頃合いを見計らって「部屋にお誘い」するのが常だ。

元々、中也も紬も容姿は一級品。
更に、連れて来られた先がポートマフィアの幹部の地位に相応しい高級マンションで、設置されている家具は凡て高級ブランドの物のみ。

誰もが「自宅」なのだと疑いもしない、隙と油断を生むためだけの空間ーーー。


あの部屋は、そのためだけの「模擬自宅」なのだ。

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