第18章 本心
「ふーん。成る程ね」
話をするために玄関まで山吹を入れた太宰は話を聞き終えても、怒ったり、咎めたりするわけでもなく特に感情のこもってない声音で事情の把握を完了した旨を端的に伝えた。
「君が付けていたのは間違いなく私だろうね。先刻も云ったけど紬は未だ帰ってきてないし」
「………そうなりますよね」
暗かったこともあり、その通りだろうなと納得する。
「中也の家ねぇ」
「あの、ご存知無いですか?」
「数ヵ所は知ってるけど」
「え!?数ヵ所!?」
「うん。まあ、其処に驚くのは今度にして、今、中也が居る場所を知りたいなら矢っ張り紬に訊くのが1番確実だよ」
「それは何としてでも避けたいと云うか………この事も本当にバレたくなかったし……その…」
「……。」
太宰が腕を組んで考え始める。
「まあ、君が此処に来たことを黙っておくことは出来るよ」
「え、本当ですか?」
「うん。私、可愛い女性が困っているのは放っておけない質だから」
「……それなら中原さんの居場所……は判らなくてもいいので、その数ヵ所あるという家を教えていただきたいのですが……」
「うーん。昔と変わらない場所を未だ使っている保証は無いし、教えてもいいけど君がその場を巡ったら紬にはバレてしまうけど善いかな?」
「……え。」
「中也が動けない状況ならば、相棒である紬は万が一に備えて………その情報が敵対組織に漏れてしまってからの奇襲を想定して何か仕掛けているよ?」
「………何でそんな事が判るんですか?」
「私ならそうするからさ。寧ろ私ならばそれを餌に、敵を誘き寄せるまでしている」
「っ!?」
サラリと述べられた内容に顔をしかめる山吹。
そんな山吹をよそに太宰は懐から通信端末を取り出した。
会話をしていて気付かなかったがソレは震えていた。
「もしもし」
『ーーーー』
「だって、帰りが遅いんだもの。今日はシチューって云ったのに!」
此処で漸く電話の相手が自分のよく知る人物だと確信する。
「は?中也に頼まれたものを購い物してる?何それ。私よりあのチビの方が大事だって云うのかい?」
一瞬にして険悪な雰囲気になる。
あ、ヤバい。これはもしや巻き込まれるのでは?
山吹の直感がそう告げた。