第18章 本心
山吹はその場所を瞬時に把握する。
太宰幹部が帰った後に部屋に行けば……!
思わずニヤけてしまった顔をパンっと叩いて正し、エントランスに向かった。
以前、中原から習った電子扉を看破する方法を用いて中に入る。
そして2つある昇降機の内、先刻使われていない方に乗り込み、目的の階の1つ下で降りた。
部屋の数と位置を確認し、先程の明かりが付いた部屋の位置と照合するために一巡してから、昇降機が動く出したら直ぐに判る位置で待つことにした。
それから10分後の午後20時前ーーー
ウィィィン……という可動音が聴こえたのと同時に昇降機が下っていった。
「動いたっ!?」
昇降機は1階で停止し、動く気配をみせない。
「やっと帰ったかなっ…!」
山吹は階段で1つ上の階まで行き、目的の部屋の前に速足で向かった。
やっと会えるーーー!
それだけが頭の大半を占めていた。
何で此処が判ったのかと問われたら紬を尾行したと正直に話し、それでも会いたかったということを伝える。
そう頭の中でシュミレーションしてから山吹は呼び鈴を鳴らした。
暫くしてカタッと小さい物音が聴こえる。
住人が………中也が扉の向こうに来たのだろう。
カチャリ
音を立てて開いた扉から出てきたのはーーー
「………え……」
「はいはーい。何方様ですかー?」
山吹の望んだ人物では無かった。
否。それだけなら善かったのだ。
「太宰幹部………」
出てきたのは山吹をこのような衝動に駆り立てた人物……。
しかし、だ。
何かが違うような……。
「幹部……?嗚呼、紬の部下の子かい?」
「!?」
そう問われて脳が正常に動き出したのだ。
声も。
髪の長さも。
彼方此方に巻かれている謎の包帯も。
よくよくみれば山吹の知る太宰とは異なる点が多々ある。
そして、浮かんできた答えをゆっくり口に出した。
「もしかして………太宰幹部の……」
「兄だよ。初めまして、可愛らしいお嬢さん」
ニッコリ笑って答えた太宰に山吹は青くなるしか出来なかった。