第18章 本心
20分後ーーー山吹は本当に目的の場所に来ていた。
ポートマフィアの本部から適度に近い高級マンションやらお洒落な商業施設が建ち並ぶエリアだ。
「今、思えば何で見付けられるって思ったんでしょうか」
昨日も駄目だったのに、と溜め息が溢れる。
暫く彷徨いてみたものの、矢張り建物は多いし、広すぎる。
部下達はこのエリアの入り口で中也を降ろしたらしく、どの建物に住んでいるのかすら判らないと云っていた。
もしかしたら会えるかもしれない、と思って昨日も彷徨いてみたけれど、こうも広ければそう簡単には成し得ないし。
でも会いたい。
「矢っ張り、太宰幹部をつけるしかないか。見逃さないようにー……」
そう呟いた時に山吹の居る歩道の反対側に通行人が通り過ぎ、一番近くの角を曲がった。
「え」
その人物は見知った顔、且つ買い物袋を提げていた。
間違いじゃない!太宰幹部だーーー!
山吹は最初の予定通り尾行を開始した。
気配を殺して跡を付ける。
暗い上に離れて歩いているせいで姿ははっきり見えないがこれ以上近付けば気付かれてしまうというギリギリの位置を保ちながら。
「絶対に見失わないようにしないと…!」
そう思った矢先に、追っていた姿が消えた。
「!?」
否、この一帯で一番高い建物に入っていったのだ。
「此処に中原さんのお住まいが………!」
はやる気持ちを抑えて考える。
しかし今から如何するか………。
山吹は建物まで行ったが、エントランスに入る前にセキュリティ万全な扉に完璧に阻まれてしまっているのだ。
この程度の自動扉なら開けられる……けど。
山吹は自分のスマートフォンを取り出した。
『通知なし』
山吹は仕事が終わって直ぐに中也に連絡していた。何時もなら直ぐにきていた返事が未だに来ないのだ。
未だ本調子ではないと太宰幹部が指摘していたくらいだから、きっと眠ってしまっているんだ。
………はっ!!そうなれば来客と同時に部屋の明かりが付くのでは!?
山吹は透明の自動扉からエントランスの方を必死で見て、動いている昇降機が停止した階を確認すると直ぐに外に出た。
部屋の窓が見渡せる位置で、目的の階の列を見上げた時だった。
「!?」
1部屋だけパッと明かりが点ったのだ。