第18章 本心
そんなこんなを経た午後7時ーーー
本日の業務を終えた山吹は紬の執務室に来ていた。
体調不良と勘違いしてくれた……基、気遣ってくれた紬にお礼を述べる、と云う名目で帰宅時間をさりげなく確認するつもりだったのだ。
深呼吸をしてから叩敲を行う。
「失礼します」
そう云って扉を開けてから絶句した。
部屋は既に真っ暗で、勿論、人の気配は無かったのだ。
「なっ……!?」
真逆、もう帰ったの!?
山吹は慌てた。
何時の間に帰宅したのだろう。
抑も、本当に仕事を終えて正規時間で帰宅したのだろうかーーー。
頭が混乱する。
「紬君なら会合に行っているが?」
「!」
ぐるぐるとしていた思考を停止させるような言葉が突如、聴こえたのだ。
山吹が後ろを振り返ると其所には広津が立っていた。
「貴方は先日の」
「広津だ」
自己紹介を終えて広津は手に持っていた紙束を紬の机の上に置きに行き、直ぐに部屋から出た。
「紬君は中原君が赴く予定だった会合に行っている。恐らく、そのまま帰宅すると思うが」
「そ、そうなんですね…有難うございます!」
山吹は御礼を述べると直ぐにその場を去った。
中也の任務だったならば判るのだ。
山吹は自身の予定帳を取り出して確認をする。
会合の終了予定時刻は19時ーーー丁度終わった頃かな。
その場所から、この前、中原さんの部下達が教えてくれた中原さんを送った場所までは3~40分は掛かり、此処からは20分も掛からないから今から急いで買い物して待ち伏せすれば未だ間に合う筈!
山吹は一瞬にして計算し、予定帳を仕舞うと直ぐに走り出した。