第18章 本心
ポートマフィア首領室ーーー
「お呼びですか?首領」
山吹は入室せず、紬だけ。
読んでいた紙束を置いて森は顔を上げた。
「ああ、紬君。呼び出して悪かったね」
「いえ。それで要件は」
「此れを」
スイと渡されたのは今まで森が見ていた紙だ。
「『大切なものの記憶を奪う異能』……?」
「そうなのだよ。ここ最近、この異能者がこの界隈を荒らしているという情報を得てねえ」
「……。」
紬は一通り読み終えるとその紙を森に返した。
決定的ななにかを告げずとも理解したーーーと森は捉えてニコリと笑った。
「ところで紬君」
「はい」
「『例の件』は如何なっているかな?」
「問題ありません」
「思いの外、早く片付きそうでよかったよ。ああ、そうだ。『理想郷』の成分解析が済んだと科学班が報告に着たよ。後で君のところにも行くように伝えよう」
「有難うございます」
「あと、中也君の容態は如何だい?」
「中也ですか?うーん……今頃、暇をもて余してるんじゃないですか?」
「その様子だとお見舞いには行ったのかな?」
「いえ?必要がありませんから」
「ああーー……そうか。まあ、復帰後の嫌がらせは程ほどにね」
「………善処します」
紬は一礼して退室していった。
「ねえリンタロウ」
「何だい?エリスちゃん」
「チューヤは大丈夫かしら?」
「心配ないよ。紬君の話し振りだと明後日には何時も通りに出勤してくるさ」
「紬は相棒なのにお見舞いも行ってないのね」
「うふふ。違うよエリスちゃん。紬君は『行く必要がない』と云っていたのだよ」
「?何が違うの」
「今は何時も通りには居られないからねぇーーーあの2人」
「?」
なんでもないよ、と森は笑って云った。