第18章 本心
「銃を持って容赦なく撃つところはマフィアだって思いましたが、とても野蛮な事を繰り返すような………なんか私の知るマフィアっぽくは無かった……」
「確かに戦闘されている想像は無いですね」
男はうんうん、と頷いた。
大学講師と同じ意見なのだろう。
「…………あの女は、悪魔だ」
「「!」」
体格の良い男が小さな声で云った。
「昨日も云われてましたね、それ」
「………何故、貴様が普通に会話出来たのか疑問でしかなかったが………無知はいいな」
此処に来て始めて会話が成立した男の方を向く大学講師。
「貴方なんか絶対に彼女に負けるとは思えませんけど」
「………本当に、無知は良いな」
男は覇気の無い顔で笑った。
「この黒社会において存在する噂を教えてやる」
「「!」」
伝令の男も牢屋の中を注目した。
「『双黒』と『対黒』を敵にまわせば死ぬーーー」
「「……。」」
・・・。
何のことか判らずにシン、となるが直ぐに大学講師が口を開いた。
「……何か、昨日も云われてましたね?」
「『双黒』?『対黒』………何処かで聞いたような……」
「黒社会で最凶最悪と云われるコンビの通称だ」
「あ!昨日、確か資料で…!」
伝令の男がハッとする。
「それで?そのコンビが彼女と何の関係が…?」
「未だ判らんのか……。あの女がそのコンビの片方なんだよ」
「「!?」」
ぎょっとする2人。
「いや、しかし、とてもそんな風には……!」
「……。」
伝令の男は資料にかいてあった為、否定はしなかった。
「あの女が出てきた時点で逃げれば……」
男はフッと笑う。
「いや、でも矢っ張り彼女が貴方に勝てるとは思えませんけど……」
「「……。」」
正直なところ、伝令も男本人もそう思っていた。
拘束された人間相手にしか暴力を発揮しなかったし、物腰も柔らかかった。
マフィアという肩書きが無ければ、その辺の女よりも長身ではあるが華奢なのでは。
「強いのは相方だけとか?」
「……まあ、それもあるだろう。見たことは無いが相方の男の破壊力は凄まじいらしい」
「そうなんですね」
「……。」
太宰幹部の相方って中原幹部だけど……。
「あの小さい身体で破壊力なんてあるのかな…」
「え?」
「!?」
しまった、と。
伝令の男は慌てて口を接ぐんだ。