第18章 本心
「良いかい。君達の世界には君達のルールがあるように我々の世界にも我々のルールが存在する。闇は光の裏に存在するモノで、光を侵蝕するために存在しているわけではないのだよ。均衡を保っていなければ世界は成り立たないからね」
紬の言葉を一同、黙って聞いている。
「君はルールを犯した。悪戯に闇のモノを光の世界に持ち出した。知っているだろう?そのせいで光の世界に混乱が生じた事を」
紬は牢屋の中で自身に喰って掛かった男から、泡を吹き始めた男に視線を移し、クスクスと笑いながら見た。
「闇の世界の住人になる心算だったのだから彼は知らなければならない。闇から持ち出した薬達の効能を、それらが及ぼす害悪を、我々のよう闇に生きる者のルールを」
時折、ビクンと身体を痙攣させているが未だ死ぬ様子はない。
苦しむ様に調合されているのだろうが楽に死ねる程の量では無いようだ。
「彼が死んだら次をーーー」
「太宰幹部」
そう云った瞬間に今まで居なかった筈の伝令が紬に近付いてきた。
紬はやる気を削がれて小さく息を吐いた。
「……何だい?」
「至急、引き受けて頂きたい案件が出来たと首領が」
「やれやれ。相棒が居ない事を良いことに、こき使ってくれるなあ」
はあ、と溜め息を吐く紬。
「君、暇でしょ」
「えっ……あ、はい」
「その男が事切れたら連絡して。それまでは何もせずに見ておくだけ。出来るかい?」
「出来ます!やらせて下さい!」
おい、何だ?彼奴の表情
………惚れたらしいよ
は?彼奴、あの噂知らねーのかよ!
ちゃんと教えたさ!でも駄目だった
恋は盲目って、こういうことを云うんだな
「ーーーねえ、君たち聞いてるかい?」
「「はい!?全く聞いておりませんでした!」」
何時の間にか話題が振られていることを知り、ビシッと姿勢を正す。
こんな気を張っている場所で、幹部の話を無視してしまった。
一瞬で処罰される事を頭に浮かべる2人。