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【文スト】対黒・陰

第17章 芽生


午後10時ーーー


「君は報告書だけ提出しておき給え。言い訳と処分は明日以降。何か云うことはあるかい?」

「ございません………」

「じゃあ下がって。私も君にこれ以上の用事は無い」

「………失礼します」


昼間は真っ赤な顔をして退室していった男は、今度は他の人間と同様に真っ青な顔をして去っていった。



凡てが紬の云う通りだった。

追い込まれて『応援要請』をしてきたのは任務開始予定時刻から30分が経過した頃だった。

「あーあ。矢っ張り、こうなった」

うんざりした顔で云うと本当に早く帰りたいのだろう。直ぐに腰を上げ、数名の部下を引き連れて現場に向かった。ーーー勿論、中也の部下2名も同行した。

紬が到着して直ぐに状況報告をするべく近寄ってきた××に「必要ない。話し掛けるな」と切り捨て、引き連れてきた部下に手短に指示を出し始めた。
昨日と違い、現場の一線に出られるようだった。
分かりやすく、的確な指示に驚いた。
こんなに任務を遂行しやすいと思ったのは初めてかもしれない。自分達の直属の上司の指示も動きやすいと思っていたが、正直なところ中也以上だと感じてしまうほどだった。


それからものの15分で粛清は完了した。


企画書では全滅の予定と××が記載していた筈だが、紬の指示で貿易工場の社長と、『繋がっていた善からぬ連中』の内の(紬が決めた)1人を捕虜として捕まえてきた。


『取り敢えず、先客がいる牢に入れておいて』

返事をして、捕虜を連行する中也の部下2人。

何故、別々の案件の捕虜を同じ牢に入れたのか。
抑も、先客と呼ばれた男は何故、未だに生かされているのか。
紬の指示に対して疑問だらけであったが反論することなく従った。

その任務を終えて部屋に戻る途中、××に遭った。
何時もの様に威張る気配はなく、完全に灰と化していた。

「首領直々に頂いた任務だったのに………」

燃え尽きた状態でこの言葉を永遠に繰り返していた為、目を合わせないようにして紬の執務室へと戻った。


そして、報告書やら後片付けやらを行って今に至る。
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