第17章 芽生
そんな大声が聴こえたのか。
「っ!?何かありましたか!?」
「「!」」
1人の女性が資料室へと入ってきた。
「いやっ……一寸、先輩に説教くらってただけです」
「説教……ですか。有事かと思いました………」
後輩が手をバタバタしながら説明する。
その説明に安堵をした女性を中也の部下は知っていた。
「……山吹さんも何か資料を?」
「へ?あ……と、その……」
自分と同じ上司に仕えている山吹に優しく声を掛けた先輩。
新参者と云えど中也の側近に選ばれている人間であるため立場を弁えて話し掛けたというのが正しかったかもしれない。縦社会において上下関係は絶対ということを正しく理解した言葉遣いと態度で山吹の対応を続ける。
チラッと伝令の方をみて云いにくそうに言葉を詰まらせていることに気付き、後輩に通常業務に戻るように云う。
云われた方も、知りたかった事を知り終えた後だったので直ぐに退室していった。
それを見送ってから山吹は口を開く。
「昨日……重大な事をしてしまったから…」
「……。」
重大……。
任務を失敗に導き、慕っている上司に大怪我を負わせた事を云っているのだと直ぐに悟った。
「樋口さんから彼女の過去の任務報告なら資料室に凡て残ってるとお聞きして………次はないように学びに来たんです」
涙声で語るその言葉に力強い意志のようなモノを感じとれた発言に、今まで見ていた資料をそのまま山吹に渡した。
「え。」
「丁度、俺達も『勉強』していたところだったんだ」
「!」
手の内にあるものが自分の探し物だと判った瞬間にパラパラと捲り始めた。
「………矢っ張り、中原さんみたいに異能力が有るからでしょうか」
「違うと思います」
先輩は即答した。
「俺は中也さんと共に動く太宰さんしか見たことなくて、昨日、初めて中也さん抜きの任務にお供させてもらったんですけど………太宰さんが『異能力』なるものを使っているところなど、そのときも含めて今まで一度も見たことがありません」
「えっ!?」
捲っていた手を止めて、顔を上げる。