第17章 芽生
太宰さんの云う通りだった。
「………い………」
帰ってきたら中也さんは目を覚ましていた。
「………ぱい……」
その後、直ぐに普段のような口論が………いや。
割りとマジギレして一方的に太宰さんは怒っていたのに………
あの展開から本当に中也さんを云いくるめて…帰宅させた。
ーーー『俺達の望み通りに』
「先輩ってば!」
ハッ。
連れが居たことを一瞬、忘れかけていた男は耳元で大声を出されて漸く現実に戻ってきた。
「ああ……悪い。なんだったっけ?」
「青褪めた理由ですよ」
確りして下さい、等と云う後輩の言葉によって再び今まで回想していた事が頭を駆け巡り、鳥肌を立たせる。
「………凡てお見通し………ってことか……?」
「何云ってるんですか?先輩」
この恐怖や畏怖だけでは云い表せられない感情を説明することは不可能だと悟った中也の部下は後輩を連れて資料室へと向かったのだった。
この選択は正しかった。
何故ならーーー
「「………。」」
時間にして約30分といったところか。
あんなに楽天的に話していた後輩も今や自分と同じ顔色をしている。
「………こんな人……世に2人としていて欲しく無いですね……」
「上司だぞ、口を慎め……」
紬の執務記録は、何れをとってもマフィアの幹部に君臨する理由を納得させるものだった。
自由奔放に逃走、自殺癖ーーー
他の者が行えば確実に『クビ』だけでは済まない事を許容されている理由も説明が付くほどの内容に、閲覧した事を後悔するほどだった。
「…………それなのに双人居るんですね………しかも、裏切り者……太宰治」
「それは禁句だ!」
「っ!?」
突然、大声をあげて怒鳴ったため、ビクッとなる後輩。
「『太宰治に触れるべからず』これは絶対に存在する暗黙のルールだ………いいか?絶対にその話題に触れるな………太宰さんの前では絶対だぞ!?」
あまりにも真剣に云う中也の部下の気迫に圧されて、後輩はコクコクと頷いた。