第17章 芽生
「やあ。先刻は相棒が世話になったみたいで」
「……っ!」
ニコニコと笑いながら近づいていく紬に男が手を掲げる。
その瞬間、後ろでその様子を見ていた中也の部下達の意識が急に朦朧となる。
「ふーん。君、異能持ちだったの」
「「「!?」」」
ぐらりと揺れた2人を見て、紬が何事でもないように云った。
一瞬にして状況を悟られた人間に。
全く様子が変わらない紬に。
各々が各々の驚きを示す。
「なっ……何故きかなっ………」
「対策くらいしてあるに決まってるでしょ」
紬はそう云うと懐から銃を取り出して男の腕と足を片方ずつ撃ち抜いた。
耳をつんざくような悲鳴が響き渡る。
その声のお陰で、半分以上、夢の世界へと持っていかれていた意識が少し戻ってきた2人はーーーとりわけ何かするわけでもなく、先刻までと同じ様に紬達のやり取りをボーッと眺めている。
「『意識を断つ』異能力……逃げるには便利な異能だよね。まあ、君さえいなければ我々から逃げ切る事など不可能な程の弱小組織だけど」
「っ……!」
男が反論したそうに顔をしかめた。
が、立場が、状況が。
否定するという行為を許可しない。
「訊きたいことがあるんだ」
「はっ……答えると……思うか?」
パンッ!
「ぐぁっ……!」
容赦なく無事だった方の足を撃ち抜く紬。
「やれやれ。言語が通じない人間を相手するのが面倒だったから中也に投げたのに矢っ張りこうなった」
はぁー。と態とらしく溜め息を着く。
そして、何事もなかったかのように続けた。
「ここ2、3週間で手を出し始めた『理想郷』の入手ルートを教えてほしいのだよね」
「……っ……知らなっ……」
「ああ、そう」
パンパンッ
次は2発立て続けに。耳と、腕を撃ち抜いた。
「待っ……喋…から………助け」
「だったらさっさと話しなよ。私は気が長い方では無いからね」
新しい銃弾を装填しながら紬は詰まらなそうに云う。
「何…モン……判らね……取引…若……連中……」
「それは此方も既に周知している。あーあ。時間と弾の無駄だった」
「っ……!」
男が死期を悟ったのか、慌てて大きく口を開いた。
「▲▲コーポレ………!!!」
ザシュ……!
黒い何かが男を背後から貫いた。