第17章 芽生
「………紬」
「駄目」
「久し振りに会ったのに………?」
甘えるように云う太宰に苦笑しながら駄目、と云い続ける紬。
うーっと唸りながら引っ付く太宰の手付きが事に及ぼうといよいよ本格的に動き出したことに気付いて紬は太宰の首に手を回して、云った。
「この一件が片付いたら治の我が儘を1つだけ聞いてあげる」
「!」
ぱあっ
そんな効果音が聴こえそうな程に明るい笑顔を浮かべた太宰は動かしていた手をピタリと止めた。
「何でもいいの!?」
「私に出来ないこと以外なら」
「うわー何にしようかな~」
紬を抱き締めたままポスッと寝台に身を預ける。
「碌なこと考えてないでしょ」
「うふふ。全然やってくれないコスプレとか良いなあーなんて考えてないよ?」
「早まったかなあ、この提案」
ピッタリと離さない兄の浮かれ具合に溜め息を1つ着いて紬は太宰に触れるだけの口付けをした。
「まあ酷い提案に至る前……成るべく早く片付けるからもう少し待ってて」
「ふふっ。今までと違って一緒に過ごせそうだし、それまでは大人しくしておくよ。でも覚悟しておいてね?」
「はいはい」
それから双人はどちらからか判らないほどのタイミングで「お休み」と云い、眠りに着いたのだった。