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【文スト】対黒・陰

第17章 芽生


その意思を正確に汲み取った紬は太宰の頭を撫でてやった。

「氷枕持ってくる」

そう云うと紬は一旦、寝室から出ていく。

「結構、重症だったの?」

「……痛みが無えから判ンねェ」

「此処に帰す迄、普通に振る舞わせる理由でもあったってことか」

「……それは俺も知らねーよ」

そんな会話をしていると紬が氷枕を持って戻ってくる。
普段紬が寝る定位置に座って先刻と同じ様に中也の頭を撫でる。

「如何?冷たすぎない?」

「おう……」

「ふふっ。それはよかった。疲れてるだろう?ゆっくりお休み」

「……ん」

瞼に口付けを落とす。
中也はそのまま目を閉じる。そう時間が経たない内にすぅすぅと寝息を立て始めた。

「本当に重症だったんだね」

「背中と腹部、両方刺されてるからね。幸い、背中の方はそう傷は深くないようだけど」

「……どんな状況だい、それは」

「『そんな』状況だよ」

「…………ああ。そう云うこと」

大した情報量ではないはずなのに紬の云わんとすることを理解したようだ。
此方も先刻と同じ様に後ろから抱き締めながら中也を見る。

「痛み止めも麻酔も治と同じで効きにくいからねえ。こうして痛みを止めてあげてないと休めやしない程には重症なんだろう」

「見てないの?傷」

「いや、首領に治療前の状態を見せてもらったよ。でも中也が血塗れだったってこと以外は分からなかった」

紬は太宰に体重を掛けた。


「紬のせいじゃないでしょ」

「……。」

「中也だって同じ事云うよ」

「……何で判るの?」

太宰の胸に顔を埋めたまま紬が問う。
そんな紬の頭を撫でながら太宰は優しい声音で云った。


「紬の事を思う気持ちは同じだからね」


癪だけど。この一文だけ不満を纏って云う。
紬はその答えに納得したのか苦笑してそれ以上は何も云わなかった。

「ところでシャワー浴びてきたの?」

「うん」

すん、と抱き締めながら石鹸の匂いを確かめる太宰に肯定の意を表す。

「着替えて寝るだけにしておかないと治、襲うでしょ」

「……。」


紬の考えていることが分かるように太宰の考えていることがバレている事に太宰は明らさまに落ちこんでみせた。
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